神葬祭

神葬祭（しんそうさい）とは

神葬祭は、日本固有の宗教である神道に則った葬儀の形式です。仏式葬儀が広く行われている現代においても、神道の精神に基づいた神葬祭は、故人の霊を慰め、祖霊として祀るための重要な儀式として受け継がれています。

歴史

神葬祭の起源は、日本の神話にまで遡ることができます。古事記には、天若日子の葬儀の様子が描かれており、古代の葬儀の様式を知る手がかりとなります。しかし、仏教伝来以降、葬儀は仏式が主流となり、江戸時代の寺請制度によって、その傾向はさらに強まりました。

しかし、江戸時代中期以降、国学の興隆とともに、日本古来の文化や精神に回帰しようとする動きが活発化し、神葬祭の研究も進められました。そして、日本古来の信仰に基づいた葬儀を求める神葬祭運動が起こり、幕府は特定の神道家に対して神葬祭を許可するようになりました。

明治時代に入ると、政府は神祇政策の一環として神葬祭を奨励し、青山霊園のような神葬祭専用墓地も設立されました。一時、火葬が禁止された時期もありましたが、信教の自由が保障された大日本帝国憲法下でも、神道は宗教ではないという見解から、神社神道の神職は神葬祭を行うことが制限されました。戦後、神道は宗教法人となり、国家管理から離れたことで、再び自由に葬儀を執り行えるようになりました。

特徴

神葬祭は、仏式葬儀とは異なる独自の特徴を持っています。

諡号（おくりな）: 仏式における戒名に相当するものとして、故人の霊璽に氏名とともに、その性質や業績、亡くなった年齢などに応じた尊称が贈られます。
玉串拝礼（たまぐしはいれい）: 仏式の焼香の代わりに、榊の枝に紙垂を付けた玉串を神前に捧げ、拝礼を行います。
奥都城（おくつき）: 神道の墓は「奥都城」と呼ばれ、神宝である天叢雲剣や烏帽子を模した形状をしていることが多いです。
祖霊舎（それいしゃ）: 仏式の仏壇に相当するものとして、祖先の霊を祀るための祖霊舎が設けられます。

流れ

神葬祭の祭式は、地域や神社、斎主によって異なりますが、一般的な流れは以下の通りです。

1. 枕直しの儀: 故人の死を神棚や祖霊舎に報告し、神棚を封じます。遺体には白の小袖を着せ、北枕に寝かせます。
2. 納棺の儀: 遺体を棺に納める儀式で、榊の葉に水をつけて故人の口を湿らせる「末期の水」を行うこともあります。神衣と呼ばれる衣装を着せ、男性には烏帽子、女性には扇を持たせることがあります。
3. 通夜祭および遷霊祭: 仏式の通夜にあたる通夜祭を行い、故人の霊を霊璽に移す遷霊祭を執り行います。遷霊祭では、部屋を暗くして「御魂移しの儀」を行い、警蹕（けいひつ）と呼ばれる儀式が行われることもあります。
4. 葬場祭: 故人に最後の別れを告げる最も重要な儀式で、弔辞の奉呈や弔電の奉読、祭詞奏上、玉串拝礼などが行われます。
5. 火葬祭: 火葬場で遺体を火葬する前に行う儀式で、祭詞奏上や玉串拝礼などが行われます。
6. 埋葬祭: 遺骨を墓地に埋葬する儀式で、墓の四方に竹を立てて注連縄で囲い、遺骨の埋葬、祭詞奏上、遺族の拝礼が行われます。
7. 帰家祭および直会: 火葬・埋葬を終えて自宅に戻り、神職のお祓いを受け、家の門戸に塩をまきます。その後、葬儀でお世話になった人々を労うための直会（なおらい）を行います。
8. 御霊祭: 十日祭、二十日祭、三十日祭、四十日祭、五十日祭、百日祭、一年祭と続き、その後も三年祭、五年祭、十年祭と年祭を重ねて故人の霊を祀ります。

神葬祭は、故人の霊を慰め、祖霊として祀るための神聖な儀式です。その形式は地域や神社によって異なりますが、神道の精神に基づいた厳粛な雰囲気の中で執り行われます。

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