玉串

玉串：神道における神聖な捧げ物

玉串は、神道において神前に捧げる神聖な供物です。一般的には、榊の枝に紙垂（しで）や木綿（ゆう）をつけたものを指しますが、地域によっては櫟（くぬぎ）やガジュマルなどの枝を用いる場合もあります。

由来と語源

玉串の起源は、天照大神の岩戸隠れ神話に遡るとされています。神話では、フトダマが玉や鏡などをつけた五百津真賢木（いほつのまさかき）を捧げ持ったと記されており、これが玉串の由来の一つと考えられています。しかし、神霊の依代としての役割が、玉串の根本的な起源と言えるでしょう。

「玉串」の語源については諸説あり、玉をつけたことから「玉串」と名付けられたとする説や、「手向串（たむけぐし）」を略したとする説などがあります。また、「たま」を「魂」の意味とする解釈も存在します。

百人一首にも、紅葉を玉串とした歌が詠まれていますが、この場合の「幣（ぬさ）」は、旅の安全を祈願するためのものと解釈されることもあります。玉串は幣帛の一種ではありますが、旅の安全を祈願するためのものとは区別される点に注意が必要です。

玉串拝礼と玉串料

玉串を神前に捧げて拝礼することを「玉串拝礼」または「玉串奉奠」と言います。これは神道における重要な儀式の一つです。

神社への祈祷を依頼する際に納める費用は、「初穂料」の他に「玉串料」と表記されることもあります。初穂料は、お礼や御守りなどを受ける際にも使用されますが、玉串料は玉串の代わりに納める費用という意味合いが強く、祈祷依頼の際にのみ使用されます。神葬祭の不祝儀袋にも「玉串料」または「御榊料」と記されます。

玉串にまつわる地名や神札

大阪には「玉串」という地名が存在します。これは、天平勝宝6年（754年）の風水害の際に、櫛笥（くしげ）が大和川上流から流れ着いた場所に、玉串明宮（現在の津原神社）が建てられたことに由来します。現在では、東大阪市内の町名として残っています。読み方については地域によって違いがあり、「たまぐし」と「たまくし」の両方が使われています。

出雲大社では、「玉串」という神札を授与しています。これは、大榊に木綿垂をつけた玉串を霊体として信仰し、守護を頂ける存在であったことに由来します。現在では、御神号「大国主大神」が書かれた紙に変化しており、「御玉串」と称して授与されています。

天皇・皇族が用いる玉串

天皇・皇族が用いる玉串には、厳格な規定があります。榊の長さ、枝の形状、絹布の色や結び方、布の長さや幅など、細部に至るまで定められています。これらの規定は、神聖な儀式に対する敬意と厳粛さを表しています。

まとめ

玉串は、神道における重要な供物であり、その起源や意味、作法などには深い歴史と文化が込められています。地域差や時代による変化も踏まえ、神道文化の一端を垣間見ることができるでしょう。様々な解釈や歴史的背景を理解することで、玉串に対する理解がより深まるはずです。

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