神速丸

神速丸：幕末を駆け抜けた運送船の生涯

神速丸は、幕末の動乱期に江戸幕府が所有していた運送船です。元々はアメリカで「ミーティア（Meteor、隕石の意）」という名で建造されました。この船が日本の歴史に登場したのは、幕府が海外から積極的に艦船を導入していた時代のことです。

アメリカ生まれの「ミーティア」から幕府の「神速丸」へ

1861年、アメリカのシャムロで建造されたこの船は、幕府によって47,500ドルで購入されました。そして、元治元年2月6日（1864年3月13日）に箱館（現在の函館）で幕府に引き渡され、「神速丸」と名付けられました。

当時の幕府は、西洋の技術を取り入れ、海軍力の増強を図っていました。神速丸は、その一環として導入された船であり、主に物資の輸送や連絡任務に使用されたと考えられます。

戊辰戦争と神速丸

慶応4年（1868年）に勃発した戊辰戦争は、日本の歴史を大きく変える内戦でした。この戦いにおいて、神速丸もまた、その運命を翻弄されることになります。

同年4月11日の江戸城無血開城により、幕府は瓦解し、神速丸を含む幕府の艦船は明治政府に譲渡されることが約束されていました。しかし、海軍副総裁であった榎本武揚は、この決定に反発します。彼は、幕府海軍の艦船を率いて脱走し、新たな拠点を築くべく北を目指します。

8月19日、榎本武揚は品川沖を脱走し、仙台を経て蝦夷地（現在の北海道）へと渡航しました。神速丸もこの脱走艦隊に加わっていました。蝦夷地に到着後、旧幕府軍は箱館を占拠し、神速丸は箱館港に入港して待機していました。

江差沖での座礁、そして沈没

しかし、神速丸の運命は長くは続きませんでした。11月15日、旧幕府軍の主力艦であった開陽丸が江差沖で座礁したという知らせを受け、神速丸は回天丸と共に救助に向かいました。

ところが、救助活動もむなしく、神速丸自身も江差の風浪（タバ風）に煽られ、座礁してしまいます。そして、開陽丸と同じように、神速丸もまた江差の海底へと沈んでいきました。

神速丸のスペック

神速丸は、排水量250トン、全長41.6メートル、全幅5.1メートル、機関出力は45から90馬力というスペックでした。当時の運送船としては、比較的小型の部類に入ります。

参考文献

* （参考文献リストは省略）

神速丸は、その短い生涯の中で、幕末という激動の時代を駆け抜けました。アメリカ生まれの運送船が、日本の内戦に巻き込まれ、最終的には北の海に沈むという数奇な運命を辿ったのです。その名は、歴史の片隅にひっそりと刻まれています。

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