神風型駆逐艦 (2代)

神風型駆逐艦

神風型駆逐艦は、日本海軍が建造した駆逐艦の艦級であり、同型艦は9隻です。この艦級は、八八艦隊計画に基づいて建造された大型駆逐艦であり、その設計は峯風型駆逐艦を基に改良が施されました。当初、艦名は番号で呼ばれていましたが、後に固有の艦名が与えられました。

概要

神風型は、峯風型を改良した「野風型」駆逐艦をさらに発展させた艦級として、戦艦長門などの建造を伴う八八艦隊計画の一環で計画されました。主力大型駆逐艦として27隻の建造が予定されましたが、ワシントン海軍軍縮条約により、最終的に9隻の建造に留まりました。当初は艦名が不足したため番号で呼ばれていましたが、1928年8月に固有の艦名が与えられました。

太平洋戦争では、全艦が駆逐艦として参加し、ペナン沖海戦や潜水艦との激戦、米潜水艦の撃沈、そして戦没艦艇第一号となるなど、数々の歴史的な出来事に関わりました。例えば、1番艦「神風」はペナン沖海戦で活躍し、3番艦「春風」は米潜水艦を撃沈、7番艦「疾風」は太平洋戦争で最初に失われた日本海軍の艦艇となりました。また、9番艦「夕凪」は第一次ソロモン海戦やコロンバンガラ島沖海戦に参加するなど、それぞれの艦が重要な役割を担いました。

計画

1918年3月公布の八六艦隊完成案では、一等駆逐艦11隻のうち、6隻が峯風型として、3隻が神風型として竣工しました。この計画での1隻あたりの予算は2,208,546円でした。1920年8月には八八艦隊完成案で大型駆逐艦22隻の予算が成立し、神風型は2隻が建造されました。しかし、ワシントン海軍軍縮条約により計画が見直され、大正12年度艦艇建造新計画に移行しました。

この計画で、1,400トン型駆逐艦が3隻、神風型として建造され、補助艦艇製造費でさらに1,400トン型が21隻計画されました。しかし、計画は変更され、1,400トン型13隻と1,700トン型（後の吹雪型）5隻の建造となりました。最終的に1,400トン型は神風型1隻が建造され、残りは睦月型駆逐艦へと移行しました。なお、軍縮条約以後の1,400トン型を全て追風型とする文献もあります。

艦型

神風型は、基本計画番号F41B（またはF41C）を持ち、兵装配置や機関は野風型と同じですが、復原性向上のために艦幅を9インチ広げ、排水量は1,400トンとなりました。タービンはパーソンズ式ですが、直径が増加し、高圧タービンの回転数が2,750rpmに変更されています。

船体形状は峯風型と同様のスプーン型艦首で、タートルバックを持つ短い船首楼を備え、艦首のフレアが大きいです。船体中央はタンブルホーム構造で、艦尾は典型的なデストロイヤー・スターンです。舵の形状も峯風型から若干変更されています。

兵装は45口径三年式12cm砲4門、53cm連装魚雷発射管3基6門を搭載。魚雷発射管は十年式に代わり、電動機と人力で旋回が可能でした。追風、疾風、夕凪の3隻には、魚雷装填時間を短縮したスター十年式が搭載されました。機銃は当初2挺が計画され、前期艦は艦橋両舷に配置されましたが、後に留式7.7mm機銃に交換されました。9隻全てに機雷敷設軌道があり、「朝風」「春風」「松風」「旗風」には掃海設備が追加されました。また、後期艦には爆雷投射機、投下軌道が追加されています。

艦橋は峯風型とほぼ同じ形状で、当初は露天でしたが、神風型では前面と側面が固定式となり、ガラス窓が装備されました。天蓋はキャンバスのままでしたが、終戦時には固定天蓋となりました。艦橋トップには測距儀と探照灯が装備されましたが、後期艦には探照灯は装備されなかったと推測されています。煙突は野風型より若干高く、傾斜が大きく、1931年から雨水除けキャップが設置されました。第4艦隊事件後に性能改善工事が行われ、常備排水量が増加し、速力が低下しています。

後期艦

後期建造の追風、疾風、朝凪、夕凪の4隻は設計が一部変更され、基本計画番号はF41Dとなりました。艦本式タービンを装備し、ボイラーには開放缶室装置が初めて採用されました。これにより、従来の密閉型缶室の環境が大きく改善されました。

予備魚雷が2本増え、合計10本搭載可能となり、魚雷運搬軌道が左舷から右舷に変更されました。機銃は留式7.7mm機銃に交換され、装備位置が1甲板下の短艇甲板とされました。八一式爆雷投射機2基、同装填台2基、爆雷18個を装備しました。艦橋側面のブルワークは延長され、艦橋下の上甲板通路は左舷が塞がれて甲板室となりました。

最終兵装では、1944年8月の「旗風」は、12cm砲2門を撤去し、機銃を増備しました。13号電探を前部マストに装備しました。「夕凪」も同様に12cm砲を2門撤去し、機銃を増備、13号電探は後部マストに装備しました。終戦時残存の「神風」は、12cm砲3基、53cm連装魚雷発射管2基、25mm連装機銃4基、同単装機銃2挺、爆雷18個を搭載していました。また、一部証言では40mm連装機銃、二号二型電探改四、逆探、水中探信儀を装備していたとも言われています。

命名方法と同型艦

八八艦隊計画により艦名不足が懸念され、当初は番号名となりましたが、ワシントン海軍軍縮条約の結果、1928年に固有の艦名が与えられました。

同型艦

神風：1922年竣工。ペナン沖海戦から生還。戦後、座礁し放棄。
朝風：1923年竣工。米潜水艦の雷撃で沈没。
春風：1923年竣工。米潜水艦を撃沈。終戦時は艦尾を失った状態で残存。
松風：1924年竣工。米潜水艦の雷撃で戦没。
旗風：1924年竣工。米軍機の攻撃で戦没。
追風：1925年竣工。米軍機の攻撃で戦没。
疾風：1925年竣工。ウェーク島攻略作戦中に轟沈。太平洋戦争における日本艦艇の戦没第一号。
朝凪：1924年竣工。米潜水艦の雷撃で戦没。
夕凪：1925年竣工。ソロモン海戦などに参加。米潜水艦の雷撃で戦没。

当初、初期の3隻には固有名が予定されていましたが、番号名が付けられました。その後、1928年に番号名の駆逐艦は全て固有名に改名されました。

駆逐隊の変遷

第一駆逐隊

神風と峯風型駆逐艦で編成。横須賀鎮守府籍から大湊での北方警備に移り、太平洋戦争末期に南方に転戦しました。神風が終戦まで残存しました。

第五駆逐隊

朝風、春風、松風、旗風で編成。横須賀鎮守府籍から第一南遣艦隊附属となり、後に解隊。所属艦は各方面に転出しました。

第二十九駆逐隊

追風、疾風、朝凪、夕凪で編成。佐世保鎮守府籍から第四艦隊第六水雷戦隊に転籍。疾風が戦没し、後に解隊。所属艦は各方面に転出しました。

第二十八駆逐隊

朝凪、夕凪で編成。南洋調査の護衛で編成されましたが、短期間で解隊し、原隊に復帰しました。

参考文献

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海軍省/編『海軍制度沿革巻十の2』明治百年史叢書第183巻、原書房、1972年
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片桐大自『聯合艦隊銘銘伝』光人社、1993年
艦船模型スペシャル No.17 日本海軍駆逐艦の系譜 1
『日本駆逐艦史』世界の艦船 1992年7月号増刊第453集、海人社、1992年
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COMPILED BY SHIZUO FUKUI (1947-04-25). JAPANESE NAVAL VESSELS AT THE END OF WAR. ADMINISTRATIVE DIVISION, SECOND DEMOBILIZATION BUREAU
福井静夫『日本駆逐艦物語』福井静夫著作集第5巻、光人社、1993年
福井静夫『写真日本海軍全艦艇史』ベストセラーズ、1994年
防衛庁防衛研修所戦史室『海軍軍戦備＜1＞昭和十六年十一月まで』戦史叢書第31巻、朝雲新聞社、1969年
防衛庁防衛研修所戦史室『戦史叢書46 海上護衛戦』朝雲新聞社、1971年
牧野茂、福井静夫編『海軍造船技術概要』今日の話題社、1987年
「駆逐艦一般計画要領書附現状調査昭和十八年七月」
雑誌「丸」編集部『丸スペシャル No.51 日本海軍艦艇シリーズ日本の駆逐艦II』（潮書房、1981年）
『写真日本の軍艦第10巻駆逐艦I』光人社、1990年
雑誌「丸」編集部『ハンディ判日本海軍艦艇写真集第18巻駆逐艦秋月型・松型・橘型・睦月型・神風型・』光人社、1997年
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雑誌「丸」編集部『駆逐艦戦記駆逐艦「神風」電探戦記』光人社、2011年
雨ノ宮洋之介『駆逐艦戦記駆逐艦「神風」電探戦記』（原著1988年）
森恒英『軍艦メカニズム図鑑日本の駆逐艦』グランプリ出版、1995年
アジア歴史資料センター（公式）（防衛省防衛研究所）

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