禁裏付

禁裏付（きんりづき）とは

禁裏付は、江戸幕府における職名のひとつで、天皇の住まう禁裏御所の警衛や、公家衆の監察などを司りました。老中支配で芙蓉之間詰、1000石高の御役目で、役料は1500俵。定員は2名でした。配下として、各々与力10騎と同心40名がいました。

職務内容

禁裏付の勤務は当番制で、毎日御所に参内し、御所にある御用部屋に詰めていました。主な職務は以下の通りです。

武家伝奏との折衝: 朝廷と幕府の間の連絡・調整役である武家伝奏との間で、様々な事柄について協議しました。
京都所司代・京都町奉行との連携: 京都所司代や京都町奉行と武家伝奏との間の取り次ぎを行いました。京都の治安維持や行政運営において、朝廷との連携は不可欠であり、禁裏付はそのパイプ役を担いました。
禁裏の状況把握: 御用部屋にある用帳に天皇の「機嫌の様子」など禁裏における諸事を記録し、常と異なることがあれば京都所司代に報告しました。幕府は、禁裏の動向を常に把握することで、朝廷の動向を牽制しました。
禁裏関連の統括・監督: 口向（くちむき、くちむけ）や禁裏賄頭（きんりまかないがしら）の統括、禁裏における金銭の流れの監督、禁裏の警衛、朝廷内部で発生した事件の捜査、内裏普請の奉行など、禁裏の全般を監督しました。
公家衆の監督: 公家衆の行跡を監督し、火事が発生すれば発生場所が御所からどれだけ離れていても与力とともに禁門の警備を行いました。唐門・日の門・御所の三箇所の門の出入りを取り締まり、禁裏付の切手を持たない者の通行を禁じました。

禁裏付の権威

官位は昇殿を許されない地下官人クラスの従五位下でしたが、日常的には朝廷内で幕府を代表しているため権威、威勢は相当なものがありました。正二位とか従一位の官位をもつ武家伝奏に連絡、相談がある場合は「伝奏を呼べ」と御用部屋へ呼びつけました。また御所の外にあっても五摂家、宮家と行き交う場合は駕籠から飛び下りお辞儀をしましたが、大納言、中納言、参議、それ以外の堂上公家などに対しては、駕籠から下りずそのまま行ってしまうこともありました。

沿革

寛永20年（1643年）9月、明正天皇の譲位と後光明天皇の即位に伴って設置されました。初代禁裏付は、高木守久と天野長信の2名です。

安永2年（1773年）には、口向役人による諸経費の不正流用・架空発注事件が発覚し、大量の処分者を出すという事件（安永の御所騒動）が起こりました。それを受けて口向を監督する機構の改革が行われ、翌3年（1774年）に京都入用取調役・御所勘使買物使兼を新設し、これらを禁裏付の支配下としました。

慶応3年（1867年）12月に廃止されました。

参考文献

『江戸時代役職事典』 川口謙二、池田孝、池田政弘著 東京美術選書 1981年 ISBN 4-8087-0018-2
『徳川幕府事典』 竹内誠編 東京堂出版 2003年 ISBN 4-490-10621-1
『江戸幕府大事典』 大石学編 吉川弘文館 2009年 ISBN 978-4-642-01452-6
『国史大辞典』4巻 吉川弘文館 ISBN 4-642-00504-8

外部リンク

『禁裏付』 - コトバンク

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