福井重記

福井重記：陸軍軍人、そして干拓事業家

福井重記（ふくい しげき、1879年 - 1932年）は、日本の陸軍軍人であり、後に朝鮮で干拓事業に尽力した人物です。最終階級は陸軍歩兵大佐。激動の時代を生き、多岐にわたる分野で足跡を残しました。

生い立ちと軍歴

福井は、旧会津藩士の父のもと、北海道で生まれ育ちました。父は明治維新後、屯田兵として北海道開拓に従事。福井自身も、旧会津藩所縁の財団法人・稚松会の初代幹事の一人として、その活動を支えました。

陸軍幼年学校、陸軍士官学校をいずれも優等で卒業後、歩兵少尉に任官。歩兵第31連隊見習士官時代には、福島泰蔵が指揮する雪中行軍隊に参加するという貴重な経験を積んでいます。日露戦争には第八師団副官として出征。その後、陸軍大学校を卒業し、参謀本部鉄道船舶課に配属されました。

第一次世界大戦では、第18師団附の偵察将校として青島攻略戦に参加。日本軍が初めて戦闘に飛行機を用いたこの作戦で、福井は航空偵察に従事しました。歩兵第18連隊大隊長を経て、1918年には武藤信義少将に従いハルピンへ。シベリア出兵のための諜報活動を行う「武藤機関」の一員として活動し、その功績により功三級を授与されています。

帰国後、参謀本部部員となり、1920年8月には新設された作戦課航空班の初代班長に就任。畑俊六、小磯国昭といった後の重鎮たちと共に、陸軍の作戦・兵站・航空という主要部門を担いました。在任中には、陸海軍航空協定委員会の委員として、陸海軍航空隊の整備や戦時における役割分担の決定に携わり、空軍独立に関する研究調査にも従事しました。

1921年12月には参謀本部附となり、ヴェルサイユ条約平和実施委員として欧州へ出張。連合国軍事監督委員も兼務しましたが、病のため1924年9月に帰国。同年12月から1926年3月まで参謀本部鉄道船舶課長を務めた後、予備役となりました。

朝鮮での干拓事業

予備役となった福井は、阿部房次郎との親交から、朝鮮全羅北道における大規模な干拓事業の現地責任者となります。阿部は福井の将来を案じ、現職に留まるよう懇願しましたが、福井の決意は固く、最終的に事業を一任されることになりました。

当初、金堤市沿岸の1900町歩を開墾する計画でしたが、資金や工程を考慮し、約1700町歩に規模を縮小。7年の歳月をかけてこの事業を完成させました。1932年8月に行われた竣工式に出席した福井は、その場で病に倒れ、療養の末、生涯を閉じました。

栄典と著書

福井はその功績により、1915年に功四級金鵄勲章・勲四等旭日小綬章を受章しています。また、著書として『潮と闘ふ』（1933年）や、自身が編集・発行を手掛けた東洋農業株式会社の『干拓七年小史』（1932年）があります。

福井重記は、軍人として、また事業家として、激動の時代を駆け抜けた人物でした。彼の足跡は、日本の近代史において重要な一ページを飾っています。

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