福岡大博覧会 (1975年)

新幹線博多開通記念福岡大博覧会（福岡博）

1975年（昭和50年）3月15日から5月27日までの期間、福岡県福岡市において「新幹線博多開通記念福岡大博覧会」、通称「福岡博」が盛大に開催されました。この博覧会は、同年3月10日に実現した山陽新幹線の博多駅延伸開業を祝し、その記念事業として企画されたものです。「人間、自然、科学のシンフォニー」をテーマに掲げ、約100社もの企業や団体が参加。74日間の会期中に約214万3千人の来場者を迎え、当時の九州における博覧会としては過去最大規模となりました。

開催の背景と準備

博覧会は、山陽新幹線が遂に博多へと到達した歴史的な出来事を記念する目的で立案されました。開催地には、1927年の東亜勧業博覧会や1966年の福岡大博覧会など、過去にも大規模なイベントが開催された実績を持つ福岡市の大濠公園東岸が選ばれました。会場面積は、陸上約13万5千平方メートルと水面約20万平方メートルを合わせた広大な約33万5千平方メートルに及びました。会場の全体計画およびデザインは、芸術家である岡本太郎氏が主宰する現代芸術研究所が担当。トラス構造や大型テントを多用することで、限られた工期内での建設を可能にしました。博覧会の運営には、名誉総裁に高松宮宣仁親王、名誉会長に当時の福岡県知事と福岡市長、会長に西日本新聞社社長が就任するなど、政財界の有力者や著名人が多数名を連ね、その期待の高さが伺えます。

博覧会の様子

開幕に先立つ3月14日には、50名のコンパニオンが博多駅前で博覧会のPR活動を行い、市民の関心を高めました。翌15日午前9時からは、名誉会長と会長によるテープカットで正式に開会。開会式では、福岡市の姉妹都市であるオークランド市からの国際電話による祝辞が寄せられたほか、一般公募で選ばれたテーマ曲「あなたのふくおか」が披露されました。会期中の4月から5月にかけては、ハワイ、ブラジル、アメリカ・カリフォルニア州といった海外からの移民里帰り訪問団が会場を訪れるなど、国際色豊かな交流も見られました。当初、目標入場者数は250万人と設定されていましたが、最終的な来場者数は約214万3千人にとどまりました。

主な展示内容

会場内には、企業の技術力や郷土の魅力を紹介する多彩なパビリオンが並びました。来場者を案内する320名のコンパニオンは、当時としては珍しい統一コスチュームを着用していました。

パビリオンの一部紹介

ひかり館: 新幹線開業記念博覧会の象徴として、新幹線「ひかり」の名を冠した日本国有鉄道の館。0系新幹線のシミュレーター付き先頭車両やリニアモーターカー模型、鉄道ジオラマが展示されたほか、屋外には貴重な蒸気機関車も展示されました。
電気通信館: 日本電信電話公社（当時）の館で、ファクシミリやテレビ電話など、当時の最先端の電気通信技術の実演が行われました。
郷土館: 福岡県の館として、「光は西から」をテーマに、九州における海外文化受容の歴史を装飾古墳壁画や遣明船パネル、火縄銃などを通して紹介しました。
ドレスデン美術館: 西日本新聞社が出展し、ドイツ民主共和国（当時）のドレスデン国立美術館所蔵の古伊万里焼が特別公開されました。約250年ぶりに「里帰り」した名品として話題を集め、博覧会閉幕後も全国を巡回しました。
中華人民共和国館: 中華人民共和国政府の出展。建設中の新中国の姿を紹介し、当時の日中友好ムードを象徴する展示となりました。
くらしの科学館: 電気製品メーカーなどが共同出展し、アナグリフ式立体テレビや360度撮影体験など、科学技術が日常生活にもたらす未来を紹介しました。
月星仲よしランド・お菓子の国/スリラー館: 娯楽性の高いエリアとして、動物模型やメルヘンチックな「おとぎの国」展示、そしてお化け屋敷が併設され、家族連れに人気でした。

屋外のハイライト

広大な会場には、パビリオン以外にも様々なアトラクションや展示が設けられました。

アサヒブロントサウルス: 大濠公園の池の中に設置された、巨大なブロントサウルスの実物大模型。首を動かし、口から水を吐き出す仕掛けは子供たちの大きな人気を集めました。
プレイランド: 会場南端に設けられた遊園地。ジェットコースターなど、当時の最新アトラクションが楽しめました。
山笠: 博多祇園山笠振興会による飾り山笠の展示は、地元の伝統文化を紹介する重要な要素でした。

その他、多数の企業や団体が休憩施設やレストラン、売店などを出店し、来場者の便宜を図りました。

閉幕後と影響

福岡博の閉幕後、会場となった大濠公園東岸の跡地は再整備されました。現在、北端には児童遊園（くじら公園）があり、南端には1979年に福岡市美術館が開館しました。また、1982年には会場跡地の北部を使用して、ふくおか'82大博覧会が開催されています。博覧会の名残としては、大濠公園東側に設置されたデーメーテルの石像が現存しています。

博覧会の開催に合わせ、博多どんたく期間中のみ運行される福岡市内線の花電車が、特別に期間外運行されるといった企画も実施されました。また、人気アニメ「サザエさん」の1975年3月16日放送回に関連作品として登場するなど、当時の社会的な注目度の高さを示すエピソードも残されています。

新幹線開業という一大プロジェクトを記念し、九州最大の規模で開催された福岡博は、多くの人々に夢と科学技術、そして未来への期待を提示したイベントとして、その後の福岡の発展にも影響を与えた博覧会と言えるでしょう。

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