ブロントサウルス

ブロントサウルス（Brontosaurus）は、「雷トカゲ」を意味する古代ギリシア語に由来する、巨大な竜脚類恐竜の代表的な属です。長い間アパトサウルスと同一視されてきましたが、近年の研究により、ブロントサウルスとアパトサウルスは異なる属であり、B. excelsus、B. yahnahpin、B. parvus の3種で構成されると考えられています。

ブロントサウルスは、長く細い首と小さな頭部を持ち、植物食に適応していました。強靭で重い四肢と、鞭のような長い尾が特徴です。ジュラ紀後期、北米大陸のモリソン層に多様な種が生息していましたが、ジュラ紀の終わりとともに絶滅しました。成体の体重は約15トン、全長は約22メートルと推定されています。

竜脚類の代表的な存在として、ブロントサウルスは映画や切手など、様々なメディアで取り上げられ、広く知られています。

分類

ブロントサウルスは、ディプロドクス科に属する巨大竜脚類のグループの一員です。ディプロドクス科には、ディプロドクスやスーパーサウルス、バロサウルスなど、史上最大級の陸上動物が含まれています。ブロントサウルスは、アパトサウルスとともにアパトサウルス亜科を構成しますが、未分類の属も含まれる可能性があります。

古生物学者のマーシュは、ブロントサウルスをアトラントサウルスの仲間として記載し、アトラントサウルス科に分類しました。この分類は現在では使用されていません。1878年、マーシュはアパトサウルス、ブロントサウルス、アトラントサウルス、モロサウルス（カマラサウルス）、ディプロドクスを含む科を亜目のランクに引き上げ、竜脚類に分類しました。1903年、エルマー・リグスは、竜脚類という名称が、より早く命名されたオピストコエリアのシノニムであると指摘し、アパトサウルスをそのメンバーとして再記載しました。しかし、現在でも多くの研究者が竜脚類という分類名を使用しています。

種

ブロントサウルス・エクセルスス (Brontosaurus excelsus)
ブロントサウルス属の模式種で、1879年にマーシュによって命名されました。多くの標本が本種として記載されており、フィールド自然史博物館の FMNH P25112 も含まれます。この標本は、発見以来アパトサウルス亜科の不明種とされていました。ブロントサウルス・アンプルス (Brontosaurus amplus) は、パルヴス種に分類されることもありますが、エクセルスス種のシノニムです。本種は、模式標本とアンプルス種の模式標本のみが知られています。ブロントサウルス最大種で、体重約15トン、全長約22メートルと推定されます。標本は、ワイオミング州モリソン層のリード採石場から発見され、地質年代は約1億5200万年前のキンメリッジ期後期です。
*ブロントサウルス・パルヴス (Brontosaurus parvus)
1902年にエロサウルス (Elosaurus) としてピーターソンとギルモアによって記載されました。1994年にアパトサウルスに改められ、2015年にブロントサウルスとして再記載されました。標本は、ホロタイプ CM 566（ワイオミング州アルバニーのシープクリーク採石場で発見された幼体の部分骨格）、BYU 1252-18531（ブリガムヤング大学所蔵、ユタ州で発見されたほぼ完全な骨格）、部分骨格 UW 15556 で構成されています。地質年代はキンメリッジ期中期です。成体は体重14トン以上、全長22メートル以上に成長したと推定されています。
*ブロントサウルス・ヤナピン (Brontosaurus yahnahpin)
バーサ採石場のモリソン層下部から発見された、ブロントサウルス最古の種です。年代は約1億5500万年前。全長は約21メートルに成長したと考えられています。かつてエオブロントサウルス・ヤナピンの模式種だった本種は、1994年にジェームズ・フィラとパトリック・レッドマンによってアパトサウルスとして記載されました。種小名は、対になった腹肋骨がラコタ族の伝統的なヘアパイプに似ていることに由来し、ラコタ語で「胸飾り」を意味する mah-koo yah-nah-pin にちなんでいます。ホロタイプは TATE-001 で、ワイオミング州モリソン層下部で発見されたほぼ完全な体骨格です。より断片的な化石も本種のものと考えられています。1998年、バッカーは本種をより原始的な属と考え、新属エオブロントサウルス (Eobrontosaurus) （「暁のブロントサウルス」の意）を提唱しました。

記載

ブロントサウルスの頭骨はまだ発見されていませんが、近縁のアパトサウルスに似た形状であったと考えられています。他の竜脚類と同様に、首の骨（頚椎）上面には深い溝があり、一対の棘を形成しているため、首が幅広く深くなっています。脊椎は、15個の頚椎、10個の胴椎、5個の仙椎、82個の尾椎で構成されていますが、尾椎の数は種によって異なります。頚椎は他のディプロドクス類よりも太く頑丈ですが、アパトサウルスの成熟個体ほどではありません。首の肋骨（頸肋骨）は脊椎に癒合しておらず、むしろ緩く接しています。10個の肋骨は胴体の側面に均等に配置されています。大きな首は、空気で満たされた気嚢によって軽量化されていました。ブロントサウルスは、アパトサウルスと同様に、脊椎に高い棘突起を持っており、その高さは個々の椎骨の半分以上に達します。尾の形状はディプロドクス類としては異例で、比較的華奢で、腰から先の棘突起が急激に減少します。ブロントサウルスはまた、他のディプロドクス類と比較して非常に長い肋骨を持ち、それにより胸部が深くなっていました。他のディプロドクス類と同様に、尾の先端は鞭のような構造になっています。

前肢の骨も頑丈で、大腿骨はカマラサウルスのものに似ており、B. excelsus の大腿骨は Apatosaurus ajax のものと区別がつきません。チャールズ・ギルモアは1936年に、以前の復元では橈骨と尺骨が交差する可能性があると誤って診断されていたと指摘しました。ブロントサウルスは、両方の前肢に1つの大きな鉤爪を持っていました。また、すべての脚において、最初の3本の指先に爪が付いていました。これは、1頭の竜脚類に対して保存された爪の数としては、現在でも最大数として認められています。前肢の鉤爪は、緩やかに曲がっており、先端が垂直方向に短縮されています。腰の骨は、頑丈な腸骨と癒合した恥骨と坐骨で構成されています。脛骨と腓骨は、ディプロドクスのものとは異なり、カマラサウルスのものによく似ています。腓骨は脛骨よりも細く長いです。

研究史

1879年、オスニエル・チャールズ・マーシュは、ワイオミング州コモブラフのモリソン層で発見された巨大でほぼ完全な竜脚類の骨格を、新属新種として Brontosaurus excelsus と命名しました。属名は古代ギリシア語で「雷トカゲ」を意味し、種小名の excelsus はラテン語で「崇高な」または「高貴な」を意味します。当時、モリソン層での化石採集は、マーシュとエドワード・ドリンカー・コープの間で激しい競争（化石戦争）が繰り広げられていました。

1903年、エルマー・リグスは Geological Series of the Field Columbian Museum で、ブロントサウルスはアパトサウルスと属を分けるほどの違いがないと指摘し、Brontosaurus excelsus を Apatosaurus excelsus に改名しました。リグスは、両属が同物異名である可能性があり、ブロントサウルスはアパトサウルスよりも後に命名されているため、シノニムであると主張しました。しかし、アメリカ自然史博物館に標本を設置する際、ヘンリー・フェアフィールド・オズボーンはマーシュの反対者であったにもかかわらず、骨格に「ブロントサウルス」のラベルを付けました（彼がリグスの発表を知らなかった可能性もあります）。

1905年、同博物館は世界初の竜脚類の組み立て骨格を公開しました。この骨格は、主に AMNH 460 をもとに造られた複製で、Brontosaurus excelsus とされました。AMNH 標本は非常に完全でしたが、足首から先、後肢、肩甲骨、尾椎を欠いており、それらは他の標本から補われました。博物館はまた、この巨大生物の頭骨として、カマラサウルスのものに似た彫刻モデルを骨格に取り付けました。この頭骨は、当時保存状態の良い唯一の竜脚類の頭骨であり、アダム・ハーマンによって復元されました。オズボーンは、頭骨の大部分がモロサウルス（現在のカマラサウルス）を参考にしていると公表しました。

1909年、アパトサウルスの頭骨が、カーネギー採石場の国立恐竜記念公園の最初の探検で、アール・ダグラスの指導の下で発見されました。この頭骨は骨格 (CM 3018) から数メートル離れた場所で発見され、Apatosaurus louisae と記載されました。CM 11162 とナンバリングされ、ディプロドクスの頭骨と非常によく似ていると考えられました。1934年、ホランドの死後、博物館のスタッフによってカマラサウルスの頭骨と交換されました。

1970年に、ジョン・スタントン・マッキントッシュとデヴィッド・バーマンがディプロドクスとアパトサウルスの頭骨を再記載するまで、アパトサウルス亜科の頭骨について言及されることはありませんでした。マッキントッシュらは、アパトサウルスとブロントサウルスはディプロドクスのような頭骨を持っていたことが分かったと述べました。彼らは、長い間ディプロドクスに関連すると考えられていた多くの頭骨は、アパトサウルスのものかもしれないとし、密接に関連する脊椎に基づいて複数の頭骨をアパトサウルスに再同定しました。1979年8月20日、カーネギー博物館で、アパトサウルスの頭骨が初めて博物館の骨格に取り付けられました。1995年、アメリカ自然史博物館もそれに倣い、骨格を再構築し、ラベルを Apatosaurus ajax に変更し、尾と頭骨を A. louisae に基づいて復元しました。

20世紀のほとんどの古生物学者は、リグスの説に同意し、アパトサウルスとブロントサウルスの種はすべて単一の属に分類されると考えていました。国際命名規約に従い、より後に命名されたブロントサウルスは学術的な使用が無効であるとされてきました。しかし、1990年代にロバート・バッカーは、A. ajax と A. excelsus は属を分けるに十分なほど異なっていると主張しました。2015年、エマニュエル・チョップ、オクタビオ・マテウス、ロジャー・ベンソンは、二属の関係について広範な研究を行い、ブロントサウルスはアパトサウルスとは異なる竜脚類の有効な属であると結論付けました。彼らは、属と種の違いをより客観的に評価するための統計的手法を開発し、ブロントサウルスの有効性を示しました。頸椎の背側の二股に分かれた棘突起の間の幅が、ブロントサウルスでは狭い一方、アパトサウルスでは広いことや、骨盤と頭骨の違いなどが指摘されました。彼らは、かつてアパトサウルスに分類されていた A. parvus と A. yahnahpin をブロントサウルスに再分類し、Brontosaurus excelsus* を復活させました。

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