福智院町

福智院町（ふくちいんちょう）

福智院町は、奈良県奈良市の中央部に位置する、歴史と文化が息づく町です。ならまちの一角を構成し、その風情ある景観は訪れる人々を魅了します。特に、国の重要文化財に指定されている福智院本堂、木造地蔵菩薩坐像、今西家書院は必見です。

地理

福智院町は、奈良市の中央部に位置し、ならまちエリアに属します。町の多くは坂道に面しており、趣のある路地や露地庭が点在しています。北は高畑町、西は公納堂町、南は紀寺町・十輪院畑町と隣接し、東部には主要地方道奈良天理線が南北に走っています。

町の構造

主要地方道奈良天理線沿いには、奈良交通のバス停「福智院町」があり、商店が立ち並んでいます。しかし、その周辺は閑静な住宅地となっており、近年は移住者も増加傾向にあります。

歴史

福智院町の歴史は古く、天平8年（736年）に興福寺の僧、玄昉が福智院の起源となる寺を開いたことに始まります。その後、弟子の降舜が官符都維那に任じられ、坊号を福智院として地域を統治しました。南北朝時代には郷名として記録に残り、現在の福智院町だけでなく、奈良ホテル付近までがその領地であったとされています。この地は、丹坂・高畠方面から奈良に入る要所であったため、しばしば土一揆の被害に見舞われました。文明11年（1479年）には、筒井・古市の合戦の余波で略奪に遭うなど、戦乱の歴史も刻まれています。

江戸時代には奈良町の一町として発展し、福地院町とも呼ばれました。『奈良町雑録』によれば、当時は薪能や春日若宮祭に出演する能役者や、祭りに参勤する大名の役人衆のための宿泊所を提供する宿割町としての役割を担っていました。しかし、江戸幕府による儒学推進政策や、明治時代の廃仏毀釈運動により福智院の勢力は衰退し、経営難に陥りました。そのため、福智院は親交の深かった酒造業の今西家に所有地の権利を売却し、福智院の人々は各地に散らばることとなりました。現在、福智院があった場所には今西家書院が残り、福智院自体も場所を移して再建され、福智院町に存在しています。

国の重要文化財

清冷山福智院（福智（地）律院、清水寺）

736年（天平8年）に玄昉によって創建され、その後、興福寺の僧が再興して福智院と改名、さらに叡尊によって再建されました。歴史と信仰が息づく寺院です。

今西家書院

福智院氏の居宅を、大正13年（1924年）に今西家が譲り受けました。昭和12年（1937年）には、京都の二条陣屋、大阪の吉村邸と共に、民間所有の建造物として初めて国宝（当時）に指定されました。昭和53年（1978年）には解体修理が行われ、書院造りの要素は現代和室の様式にも影響を与えています。

木造地蔵菩薩坐像

漆塗りの上に彩色が施された、高さ2.73mの堂々とした座像です。右手に錫杖、左手に宝珠を持ち、千仏光背を背負っています。光背には560体の化仏が配され、六地蔵と本尊を合わせると総数は567体にも及びます。像内の墨書から、1203年に福智庄（現奈良市下狭川町付近）で造られ、1254年に当地に遷されたと考えられています。鎌倉時代の南都彫刻を代表する傑作として知られています。

交通

* 近鉄奈良線 近鉄奈良駅またはJR奈良線 奈良駅下車、天理駅行バス乗車8分

福智院町は、歴史的な建造物や文化財が数多く残る、魅力的な町です。ぜひ一度、その風情ある街並みを散策してみてください。

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