福本和夫

福本和夫について

福本和夫（ふくもと かずお、1894年7月4日 - 1983年11月16日）は、日本における著名な経済学者であり、思想史や文化史にも深い造詣を持つ学者です。彼は生前に確立した「福本イズム」として知られる独自の理論を打ち立て、経済学の枠を越えた多岐にわたる研究を行いました。父は福本信蔵であり、長男には福本邦雄がいます。

初期の経歴と思想的形成

福本は鳥取県久米郡下北条村で生まれ、旧制倉吉中学校や旧制第一高等学校を経て、1920年に東京帝国大学法学部を卒業しました。大学卒業後は松江高等学校の教授に就任し、その後、1922年から1924年にかけて文部省の研究員として欧州（主に英・独・仏）に留学。特にフランクフルト大学社会研究所で、ルカーチ・ジェルジやカール・コルシュなどの指導のもとでマルクス主義を学びました。

福本は当時の多くの共産党員が翻訳本に依存して議論している中、原文で理論を正確に理解し、研究することができたため、独自の見解を持ち帰りました。帰国後は山口高等商業学校に教授として迎えられ、1924年には『マルクス主義』に論文を発表し、資本論についての新しい視点を提供し、学界での名声を高めました。

日本共産党への関与

福本は、日本共産党（当時の第二次共産党）の幹部として重要な役割を果たし、特に理論的な指導者として活動しました。党内での影響力を増した彼は、自己の理論である「福本イズム」を広め、政治活動にも精力的に参加しました。彼の理論は、経済運動と政治運動を明確に区別しない「折衷主義」を批判し、労働者階級に対するマルクス主義意識を高める重要性を説いていました。

しかし、福本の活動はコミンテルンの批判を受け、党内での影響力を失うことになります。1928年には三・一五事件で逮捕され、その後14年もの間獄中生活を送りました。

晩年と学術的貢献

戦後に釈放された福本は、1950年に再び党活動に戻りますが、当時の政治状況や党内の対立から、徐々に独自の道を歩むようになります。彼は農業問題や文化史に重点を置く研究に没頭し、近世の捕鯨技術を調査するなど、独特な視点から「日本ルネサンス」という概念を提唱しました。また、浮世絵とフランス印象派との関連性についての研究も行い、多くの著書を残しました。

福本は1983年に亡くなるまで、文化や思想の枠を広げる活動を続け、独自の理論と思索を深めました。彼の研究は今でも多くの研究者に影響を与え続けており、思想史や経済学の分野でその価値は高く評価されています。

代表的な著作

福本の著作は多岐に渡り、以下のような作品が含まれています。

• - 『福本和夫自伝』全2巻
• - 『福本和夫著作集』（全10巻）
• - 『日本ルネッサンス史論』
• - 『北斎と近代絵画』など。

彼の業績は、今も多くの研究者にとっての重要な参考文献とされており、その思想や理論は今日でも議論されています。

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