カール・コルシュ

カール・コルシュ (Karl Korsch)

カール・コルシュは1886年8月15日に生まれ、1961年10月21日にアメリカで亡くなったドイツの哲学者であり、マルクス主義の理論家です。彼はフェビアン協会の会員でもあり、元々はドイツ共産党の一員でもありましたが、後にソ連を批判することで共産党から除名され、反共主義者としての道を歩むこととなります。

経歴

コルシュはハンブルク近郊の銀行家の家に生まれました。ギムナジウムを卒業後、イェーナやベルリンの大学で法学を学び、1911年にはイェーナ大学で法学博士号を取得しました。1912年にロンドンに渡り、そこでも研究を進めました。この時、彼はフェビアン協会に加入しました。

第一次世界大戦が勃発すると、ドイツに帰国し軍に従事しましたが、反戦的な態度が影響し、階級が下がりました。戦争中に2度の負傷を経て、1918年には中尉の地位にありながらも国際主義的な思想を維持しました。1919年にドイツ独立社会民主党に加入し、翌年にはドイツ共産党の一員となります。

1923年にはテューリンゲン州の法務大臣に任命され、1924年には共産党の国会議員に選出され、コミンテルン第5回大会にも出席しました。しかし、彼の共産党への政治的批判が高まり、国際共産主義グループの一環として独ソ通商条約に反対。1926年には共産党から除名され、その後は特定の政治組織には関わりを持たなくなります。

コルシュは1933年に国外へ亡命し、ベルトルト・ブレヒトと出会います。1936年にはアメリカに移住し、1940年代にはいくつかの雑誌に寄稿しました。1961年、彼はマサチューセッツ州ベルモントで亡くなります。

思想

1920年代のコルシュはマルクス主義の中でも史的唯物論を深化させる試みを行いました。特に、ロシア革命以降、レーニンの弟子たちによる解釈が強まる中、彼は唯物論が実証科学化し主観的な面が見過ごされることに懸念を抱いていました。彼の思想はドイツでルカーチと共有されましたが、コミンテルンの指導者ジノヴィエフからは批判されました。

1930年代後半になると、科学論と記号論理学に傾斜しソ連に対する厳しい批判を展開、「プロレタリア独裁ではなく、プロレタリアに対する独裁」といった主張を通じて強固な反共主義に転じました。

影響

コルシュの思想は、特に革命運動に対して大きな影響を与えました。彼の理論はマルクス・レーニン主義には受け入れられませんでしたが、共産主義者の中で反体制派や理論家に影響を与え続けました。特にドイツやイギリス、ハンガリー、イタリアにおいて1960年代から1970年代初頭の革命政治の復活に影響していました。

また、コルシュは著名なマルクス主義者との交流もあり、彼は劇作家ベルトルト・ブレヒトを教え、親しい関係を築きました。社会研究所創設者フェリックス・ワイルやドイツの歴史家アルトゥル・ローゼンベルクにも影響を与えました。彼の思想は福本和夫などを通じて日本にも導入されましたが、あまり長続きしませんでした。

著作

コルシュの代表的な著作には『マルクス主義と哲学』（1966年）、『カール・マルクス』（1967年）、『社会化における基本問題』（1969年）などがあります。彼の作品は、マルクス主義の理解を深める上で重要な資料となっています。

もう一度検索