福済寺

福済寺（ふくさいじ）

福済寺は、長崎県長崎市筑後町に位置する黄檗宗の寺院です。山号を分紫山と称し、崇福寺、興福寺と共に「長崎三福寺」として、さらに聖福寺を加えて「長崎四福寺」としても知られています。1628年（寛永5年）に創建され、長きにわたり地域の歴史と文化を見守ってきました。

歴史

福済寺の歴史は、江戸時代初期に遡ります。

1613年：江戸幕府によるキリシタン禁止令が発布。寺請制度が導入され、唐人も寺の檀家となり、キリシタンではないことを証明する必要が生じました。これにより、唐人たちが唐寺を建立する動きが活発化します。
1628年：福建省泉州府出身の僧、覚海が弟子の了然、覚意と共に来日。岩原郷（現在の筑後町）に庵室を結び、海上守護神である天后聖母（媽祖）を奉りました。
1649年：蘊謙戒琬禅師が来日し、正式な寺院諸堂を創建。唐人が建立に大きく貢献しました。山号「分紫山」は、蘊謙禅師が泉州の紫雲山にいたことに由来します。
1650年：観音堂が建立されました。
1656年：木庵性瑫が来日し、蘊謙が木庵に住持の座を譲ります。
1660年：木庵が摂津の普門寺へ赴いたため、蘊謙が再び住持に就任しました。
1672年：蘊謙が老齢を理由に、住持を慈岳に譲ります。
1910年：本堂（大雄宝殿）、青蓮堂、回廊などが国宝に指定されました。
1945年：長崎市への原子爆弾投下により、福済寺は焼失という悲劇に見舞われました。
1979年：原爆犠牲者と戦没者の冥福を祈り、万国霊廟長崎観音が大雄宝殿跡に建立されました。

長崎観音

万国霊廟長崎観音は、福済寺の境内に建立された慰霊と平和を祈念する象徴です。亀の形をした霊廟を台座とし、高さ18メートル（地上から34メートル）、重さ35トンという壮大なスケールを誇ります。内部には、地球の自転を示す日本最大級の「フーコーの振り子」（長さ25.1メートル）が設置されています。

文化財

福済寺の裏手にある墓地には、唐大通事であった潁川藤左衛門や、開山の覚海らの墓があり、長崎市の指定文化財となっています。長崎歴史文化博物館には、焼失前の寺院の全体像を復元したミニチュア模型が展示されています。また、戦時中に謎の爆沈を遂げた戦艦陸奥の主砲装甲の一部と、残骸で作られた慰霊の鉄兜が祀られています。鉄兜は約3メートルの大きさです。

原爆投下によって焼失した旧国宝建造物は、以下の通りです。

福済寺本堂（大雄宝殿または釈迦堂）、前堂（護法堂、弥勒堂または天王殿）および廻廊（2棟）
福済寺青蓮堂（観音堂）、中門（大観門）および廻廊（2棟）

交通アクセス

* JR長崎駅から徒歩約10分

福済寺は、長崎の歴史と文化、そして平和への祈りが込められた場所です。長崎を訪れる際には、ぜひ足を運んでみてください。

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