福禅寺 (福山市)

福禅寺

福禅寺は、広島県福山市鞆町にある真言宗大覚寺派の寺院です。山号は海岸山、院号は千手院。境内は「朝鮮通信使遺跡鞆福禅寺境内」として、国の史跡に指定されています。

沿革

福禅寺は平安時代の950年頃、空也によって創建されたと伝えられています。現在の本堂と隣接する客殿（対潮楼）は、江戸時代の元禄年間（1690年頃）に建立されました。

江戸時代を通じて、朝鮮通信使のための迎賓館として使用され、日本の漢学者や書家らとの交流の場となりました。1711年（正徳元年）には、通信使の従事官であった李邦彦が客殿からの眺望を「日東第一形勝（日本一の景勝という意味）」と賞賛しています。1748年（延享5年）には、正使の洪啓禧が客殿を「対潮楼」と名付けました。

対潮楼ができる以前から、この地の風景は朝鮮人に高く評価されていました。1617年の従事官であった李景稜は、「鞆の浦に到着し、ここはもっとも明媚で他に類を見ない景勝地である」と記しています。他にも、1655年の正使・趙珩による『扶桑日記』、同従事官・南龍翼による『扶桑録』、同訳官・金指南による『東槎日録』、1711年の通事・金顕門による『東槎録』、同従事官・李邦彦による『東槎日記』、1764年の正使・趙曮による『海槎日記』といった記録が現存しています。1719年の製述官・申維翰が『海游録』で言及した際には、「人々は皆ここに到着すると、この場所が第一の景観であると主張して譲らない」という評判であったとされています。

しかし、1711年以降、寺も対潮楼も荒廃してしまいました。1748年に次の通信使が訪れた際には、別の施設が使館として指定されていました。この状況に一行は不満を抱き、新しい使館ではなく船中で一夜を過ごしました。その後、正使であった洪啓禧は福禅寺に赴き、福禅寺の僧侶を慰めるとともに、かつての使館を対潮楼と命名しました。この銘は、福禅寺に同行していた洪啓禧の息子で軍官でもあった洪景海が書き写し、僧侶に与えました。現存する扁額の文字は、この写しを基にしたものです。また、洪啓禧らが即興で作った詩もいくつか残されています。1763年に次の通信使が訪れた際には、修復が完了していたことが『海槎日記』に記されています。

幕末には、いろは丸沈没事件の際、海援隊と紀州藩の交渉の場となりました。

文化財

朝鮮通信使遺跡 鞆福禅寺境内（国の史跡）
福禅寺対潮楼朝鮮通信使関係史料（福山市重要文化財）
木造千手観音立像（福山市重要文化財）
木造地蔵菩薩半跏像（福山市重要文化財）
木造役行者像及び二鬼（前鬼・後鬼）像（福山市重要文化財）

利用情報

開門時間: 8:00 - 17:00
交通アクセス: JR山陽本線および山陽新幹線 福山駅から鞆鉄バスで30分、「鞆の浦」下車 徒歩5分
所在地: 〒720-0201 広島県福山市鞆町鞆2

周辺情報

鞆の浦
沼名前神社
安国寺
太田家住宅・鞆七卿落遺跡
いろは丸展示館
鞆の浦歴史民俗資料館
法宣寺

関連項目

日朝関係史

外部リンク

福山市の指定・登録文化財
国指定文化財等データベース

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