福陵新報

『福陵新報』は、明治時代に右翼思想の源流ともいえる玄洋社の頭山満が中心となり、福岡で創刊された新聞です。この新聞は、激動の時代を背景に、その名を変え、所有者を変えながらも、日本の言論界に一定の影響を与えました。

創刊と初期の活動

1887年（明治20年）8月11日、『福陵新報』は福岡で産声を上げました。主筆には、福沢諭吉の門下生であり、『時事新報』で辣腕を振るっていた川村惇が迎えられました。川村の参加は、新聞の質を高め、読者からの信頼を得る上で重要な役割を果たしました。

『九州日報』への改題と新たな才能

1898年（明治31年）、新聞は『九州日報』と名前を改めます。この時期には、後に作家となる夢野久作や、宮崎滔天といった人物が記者として参加し、また、新聞『日本』の記者であった福本日南が主筆を務めるなど、新たな才能が集まりました。また、杉山茂丸や結城虎五郎などが資金面で支援していました。

読売新聞による買収と終焉

1940年（昭和15年）、『九州日報』は読売新聞社（現：読売新聞東京本社）に買収され、読売新聞の経営下で発行が継続されることになります。しかし、太平洋戦争が激化する中、1942年（昭和17年）8月10日、新聞統制によって『九州日報』は同じ福岡県で発行されていた『福岡日日新聞』と合併。『福岡日日新聞』が題字を『西日本新聞』と改めて刊行されることとなり、『九州日報』としての歴史に幕を閉じました。

参考文献

井川聡・小林寛 著『人ありて』海鳥社、2003年
頭山統一 著『筑前玄洋社』葦書房
宮崎滔天 著『三十三年の夢』岩波文庫、1993年
浦辺登著『玄洋社とは何者か』弦書房、2020年、ISBN978-4-86329-154-6

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