福音宣教

福音宣教の歴史と展開：イエス・キリストからの命と現代への継承

福音宣教とは、イエス・キリストの教えを世界中に広める活動です。その起源は、聖書においてアブラハムへの神の契約やヨナ書の預言といった、旧約聖書に見られる神の啓示へと遡ることができます。イエス・キリスト自身も、弟子たちに全世界への福音宣べ伝えを命じました。

初期キリスト教においては、ペテロやパウロといった使徒たちが中心となり、異邦人への宣教が開始されました。エチオピアの宦官やコルネリオ一族への伝道は、異邦人への宣教の重要な転換点となりました。その後、各地に宣教師たちが派遣され、ウルフィラスによるゴート族への宣教、マルティヌスによるフランス、パトリキウスによるアイルランド、コルンバによるスコットランドへの宣教などが行われました。アウグスティヌスによるブリテン島、ボニファティウスによるドイツ、アンスカールによるスカンジナビア、オーラフによるノルウェーなど、ヨーロッパ各地への宣教も活発に行われました。9世紀には、キュリロスとメトディオス兄弟がスラブ民族への宣教に貢献しました。また、フランチェスコやライムンドゥス・ルルスといった修道士たちは、イスラム世界への宣教を試みました。

宗教改革後、カトリック教会は失地回復を目的として世界宣教を積極的に展開しました。一方、プロテスタント教会では、世界宣教が遅れていましたが、18世紀の敬虔主義運動やモラヴィア兄弟団の活動によって、プロテスタントによる世界宣教が本格的に開始されました。イエズス会は日本にも宣教師を派遣し、多くの信者を得ましたが、日本のキリシタンは激しい弾圧を受けました。

19世紀は世界宣教において画期的な時代となり、「偉大なる世紀」と呼ばれています。しかし、自由主義神学の影響や社会的福音運動への反応として、福音派の一部では政治や社会問題への関与が低調になる時期もありました。ただし、ウィリアム・ウィルバーフォースのように、社会正義のために活動した福音派も存在しました。

20世紀に入ると、世界教会協議会（WCC）のバンコク会議（1973年）では「今日の救済」が発表され、政治的、経済的解放が救済に含まれるとの考え方が示されました。これは、社会的責任を重視するリベラル派の立場を示すものです。一方、1974年のローザンヌ世界伝道会議では、福音派は宣教を福音伝道と社会責任に分け、福音伝道が優先されると宣言しました。彼らは、一般啓示による神知識だけでは救済に至らず、イエス・キリストが唯一の救い主であることを強調し、悔い改めと信仰による神への応答を呼びかけました。

このように、福音宣教の歴史は、聖書からの起源、初期教会の活動、中世から近世にかけての宣教の広がり、そして現代における福音派とエキュメニカル派の相違点など、多様な側面から考察することができます。それぞれの時代において、宣教の方法は変化しつつも、イエス・キリストの教えを伝えるという本質的な目的は一貫して受け継がれています。現代においても、福音宣教は世界中で続けられ、多様な文化や社会状況の中で、その意義と方法が常に問われ続けています。

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