私鉄沿線

「私鉄沿線」（してつえんせん）は、1975年1月20日にリリースされた野口五郎の15枚目のシングルです。この楽曲は、オリコンチャートにおいて1974年のヒット曲「甘い生活」に次ぐ45万枚以上の売上を記録し、野口にとっての第2の大ヒット作となりました。

この曲の作詞を手掛けたのは山上路夫で、彼は若かった頃に頻繁に利用していた郊外に向かう私鉄の路線をイメージして歌詞を構築しました。意外なことに、この曲は野口の故郷と関係のない名鉄美濃町線に関連した内容ではありません。発売当初は、歌謡曲らしくないタイトルが反発を招きましたが、野口はNHKのニュース番組でアナウンサーが「私鉄沿線では…」と口にするのを聞き、多くの人々にこの曲が浸透していることを実感したといいます。

リリースから50年近くが経つ現在でも、「私鉄沿線」は野口五郎の代表作の一つとして知られています。彼は自身のコンサートや懐メロを特集したテレビ番組などでこの曲を披露する機会が多く、その魅力を伝え続けています。

楽曲の作曲は、前作に引き続き野口の実兄である佐藤寛が担当しました。しかし、彼は「甘い生活」のヒットによるプレッシャーから、曲の発表後に十二指腸潰瘍で入院する事態となったのです。さらに 本曲は、第17回日本レコード大賞で歌唱賞を受賞し、第6回日本歌謡大賞では放送音楽賞を、また第8回日本有線大賞のグランプリも獲得するなど、多くの評価を受けました。野口はこの曲を持って、第26回NHK紅白歌合戦にも出場し、前年に続く新御三家の集結を果たしました。累積売上も120万枚を超え、ミリオンセラーとなりました。

また、日本テレビ系列のバラエティ番組『秘密のケンミンSHOW』のコーナーである「辞令は突然に…」の冒頭BGMでは「私鉄沿線」が用いられ、さらに多くの人に親しみを持ってもらえる曲となっています。2019年5月には、野口のデビュー50周年を記念し、旧名鉄美濃町線美濃駅の前にこの曲の歌碑が建てられました。この歌碑には、野口が愛用しているギターのデザインも同じ石に彫られており、彼の音楽活動を象徴する存在となっています。

収録曲は、いずれも作詞：山上路夫、作曲：佐藤寛、編曲：筒美京平によるもので、タイトル曲「私鉄沿線」は3分30秒、もう一曲「帰郷」は2分57秒の長さです。さらにこの曲は、多くのアーティストにカバーされており、チェウニ（2002年）、山内惠介（2016年）、新浜レオン（2020年）によるアルバムやシングルにも収録されています。 これらの活動を通じて、「私鉄沿線」は今後も多くの人々の心に残り続けることでしょう。

もう一度検索