秋元寿恵夫

秋元 寿恵夫（あきもと すえお）

秋元寿恵夫は、1908年3月13日に長野県長野市に生まれ、1994年2月4日に亡くなった日本の医師であり著作家です。彼は学術的な背景を持ち、筆名として「室田 有」を使用しました。彼の一家は旧諏訪藩士の家系であり、精神医学者の秋元波留夫は実兄でした。

学歴と職歴

彼は旧制東京府立第五中学を卒業後、旧制第一高等学校を経て東京帝国大学医学部医学科へ入学し、血清学を専門に学びました。1938年に医師として卒業した後は、1943年に大学院の博士課程を修了し、医学博士の学位を取得しました。卒業後は、当時の満州国で関東軍防疫給水部本部（731部隊）に参加することになります。

戦後、彼は東京民主医療機関連合会の結成に関与しました。1949年には、臨床検査法の確立と、検査技師の教育を目的とした秋元研究所を開設し、1952年からは病体生理研究所として運営されました。長尾研究所や神奈川保健所での勤務を経て、1959年から1966年まで横浜市衛生研究所の所長を務め、その後1984年まで病体生理研究所長として活動しました。また、1967年には新日本臨床検査技師学校の校長も務めました。

医学教育への貢献

秋元寿恵夫は、医学研究者としての道を選ぶのではなく、医学教育に専念し、臨床検査技師の地位向上に尽力しました。彼は医療倫理や科学者の倫理の重要性を唱え、また原水爆禁止運動にも参加しました。特に731部隊での経験については、幹部研究者の中で唯一、公開の場で反省を表明し、「当時、命令に逆らうことができずに行動したが、今考えると抵抗すべきだった」と述べています。

主な著書

秋元は多くの著作を発表しており、その中には以下のものがあります。

• - 『生きた反應 血清學史の一斷面』（柏葉書院、1943年）
• - 『レオナルド・ダ・ヴィンチの解剖手稿 デラナトミア集輯A及びBの研究』（和敬書店、1947年）
• - 『ぼくらは自然をどう見るか』（誠文堂新光社、1948年）
• - 『近代醫學の道』（世界評論社、1949年）
• - 『医学概論 病むとはいかなることか』（河出書房、1952年）
• - 『細菌とたたかった人々』（さ・え・ら書房、1965年）
• - 『ウイルスの謎』（ポプラ社、1971年）
• - 『人間・野口英世 医学につくした努力の生涯』（偕成社、1971年）
• - 『自然を返せ、人間を返せ』（偕成社、1974年）
• - 『医の倫理を問う 第731部隊での体験から』（勁草書房、1983年）

また、翻訳書も数多く手掛けています。彼は医学の発展だけでなく、教育や人間の倫理についても深く考考え、その成果を社会に還元することを目指しました。

参考文献

• - 『長野県人名鑑』（信濃毎日新聞社、1974年）
• - 宝月圭吾編 『長野県風土記』（旺文社、1986年）

秋元寿恵夫の業績は、医学界にとどまらず、社会全体に多大な影響を与えています。

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