秋山政司

秋山 政司（あきやま まさし）

秋山 政司は、1924年1月8日に東京都で生まれた日本の元プロボクサーである。そのキャリアにおいて、日本ライト級王座および東洋ライト級王座を獲得し、特に日本王座の長期防衛記録で一時代を築いた。現役引退後は、報知新聞のボクシング記者として、活躍の場を移した人物としても知られる。

プロボクサーとしての第一歩は、1940年7月に極東ジムから踏み出した。キャリア初期には、当時の日本ボクシング界の顔であったピストン堀口恒男と対戦する機会も得た。1944年1月25日に行われたこの試合では、10回判定で敗れはしたが、国内トップレベルの選手との対戦経験は、後の秋山のボクシングに大きな影響を与えたと考えられる。

秋山のキャリアが本格的に花開いたのは、終戦後の1950年に入ってからである。同年4月8日、椎名勇夫（高千穂）との試合に判定で勝利し、念願の日本ライト級王座を獲得した。このタイトル獲得を境に、秋山のボクシングは驚異的な変貌を遂げる。以前とは比較にならないほどの安定感と強さを発揮し、「別人のような」快進撃を開始した。

日本王者として、秋山は驚異的な防衛ペースを維持した。1950年6月29日には、後藤秀夫（坂口）を退け初防衛に成功。その後も国内外の実力者を相手に、次々と防衛回数を積み重ねていった。1951年9月20日には山野井清次郎（青木）を破って5度目の防衛、1953年2月14日には風間桂二郎（オール）に勝利し10度目の防衛を達成するなど、国内でのその地位を不動のものとした。

また、秋山は後の世界王者となる強豪とも拳を交えている。1953年8月29日には、後に東洋フェザー級王者となる金子繁治と対戦し、2回TKOで勝利。日本王座13度目の防衛を果たした。さらに同年11月26日には、後に世界ジュニアライト級（現スーパーフェザー級）王者となるフィリピンの天才、フラッシュ・エロルデと対戦。この強敵を相手に判定勝ちを収め、日本王座14度目の防衛に成功した。秋山はキャリアを通じてエロルデと合計3度対戦し、2勝1敗と勝ち越している。1954年1月5日には小坂克己（日東）を6回TKOで下し、15度目の防衛を飾った。

国内での実績に加え、秋山は東洋のタイトルにも挑戦した。1953年3月1日、タイのチャムルーン・ソンキトラットが保持する東洋ライト級王座に挑むも、12回判定で惜敗した。しかし、再びチャンスを掴み、1954年3月30日にはフィリピンのトミー・レルマに挑戦。12回判定勝ちで見事東洋ライト級王座を獲得した。だが、この東洋王座は短命に終わり、同年9月20日の初防衛戦でフィリピンのボニー・エスピノサに判定で敗れ、王座を失った。

東洋王座を失った後も、秋山の日本王座防衛ロードは続いた。そして1955年2月16日、戸波正治（鈴木）との試合に判定勝ちを収め、日本ライト級王座19度目の防衛という、前人未踏の偉業を達成した。この記録は、1995年に上山仁（新日本木村）によって破られるまで、約40年間にわたり日本ボクシング史上最多防衛記録として燦然と輝き続けた金字塔である。

偉大な記録を打ち立てた後も、秋山は再び東洋の頂を目指した。1955年7月15日、タイのオムザップ・ナルファイに挑戦し、6回TKO勝ちで2度目の東洋ライト級王座を獲得した。しかし、その栄光も長くは続かず、同年8月25日の初防衛戦で、当時17歳という若さで「天才」と呼ばれた沢田二郎と対戦。4回TKO負けを喫し、王座を失った。この試合の後、秋山はいったん控え室に戻ったが、再びリングに上がり、現役引退を表明した。

秋山が日本王座を獲得した1950年4月以降の戦績は59勝12敗5分と、その以前のキャリアとは見違えるほどの高い勝率を記録している。プロキャリア全体を通じた最終戦績は、76勝（25KO）29敗8分であった。

引退後、秋山は報知新聞のボクシング記者として、その経験と知識を活かし、ボクシング界に貢献した。長年の取材活動を通じて、多くの記事を世に送り出した。

1980年9月、急性リンパ性白血病のため、56歳で死去した。秋山政司は、その不屈の精神と、日本ボクシング史に燦然と輝く長期防衛記録により、ライト級の偉大な王者として、今なお多くのボクシングファンの記憶に残っている。

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