秋田六郡三十三観音霊場

秋田六郡三十三観音霊場は、現在の秋田県に位置する旧久保田藩に点在する33か所の観音霊場です。

起源と歴史

霊場の起源は、長久年間（1040年-1043年）に遡ります。横手長者森の満徳長者こと卜部保昌が出家し保昌坊と名乗り、西国三十三所巡礼を行ったことが始まりとされています。彼は、大仏師定朝に33体の観音像を制作させ、故郷である秋田県地方の六郡（雄勝郡、平鹿郡、仙北郡、河辺郡、秋田郡、山本郡）の社寺に奉納し、霊場を定めたと伝えられています。

しかし、長い年月を経て霊場は忘れ去られ、荒廃してしまいました。享保年間（1716年-1735年）に入り、鈴木定行と加藤政貞の2名が古跡を訪ねて巡礼し、その記録として和歌を添えた巡礼記を残しました。この巡礼記が一般に広まり、再び巡礼地として注目されるようになったのです。

伝説によれば、三岳山（御嶽山）から北比内庄松峰山にかけて、西国三十三所の観音像が移されたとされています。南比内の七日市村に住む長崎七左衛門という老人が、この順路を詳細に記録し旅行したと伝えられています。御嶽山の臣が京都で三十三所の観世音の像を彫刻させ、比叡山の教円阿闍梨に点眼供養を依頼し、帰国後にそれぞれの霊地に奉納したとされています。その後、教円阿闍梨自身も訪れて巡礼し、その際に詠んだ歌が現在も知られています。

観音菩薩と三十三

法華経には、観世音菩薩が33の姿に変化すると記されており、「33」という数字は特別な意味を持つと考えられていました。近世に入ると、東北地方でも街道や舟運が整備され、津軽三十三観音霊場、奥州三十三観音霊場、最上三十三観音霊場、信達三十三観音霊場、安積三十三観音霊場などが開かれ、各地で信仰とレジャーを兼ねた三十三箇所巡りが盛んに行われるようになりました。

秋田三十三観音霊場

[1987年]には、秋田魁新報社が享保年間に定められた「秋田六郡三十三観音霊場」を基に、新たに「秋田三十三観音霊場」を選定しました。この選定では、観音像が紛失している寺院や、廃仏毀釈運動によって神社になった寺院などが除外され、秋田六郡以外から新たに秋田県に編入された由利本荘市や鹿角市の寺院が追加されました。

巡礼の魅力

秋田六郡三十三観音霊場巡りは、単なる寺社巡りではなく、歴史と文化に触れる心の旅です。各霊場には、それぞれ異なる歴史や伝説があり、訪れる人々を魅了します。また、美しい自然に囲まれた場所に位置する霊場も多く、心身のリフレッシュにも最適です。巡礼を通して、自己を見つめ直し、新たな発見をすることができるでしょう。

巡礼の際には、各寺院の由緒や歴史を事前に調べておくことをお勧めします。また、巡礼路は整備されているものの、歩きやすい服装と靴で訪れるようにしましょう。各霊場では、御朱印をいただくことができますので、御朱印帳を用意しておくと良いでしょう。

参考情報

秋田三十三観音霊場札所めぐり - ウェイバックマシン
秋田叢書. 第8巻『秋田六郡三十三觀音巡禮記』

秋田六郡三十三観音霊場は、信仰の深さと歴史の重みを感じさせる、貴重な文化遺産です。ぜひ一度、巡礼の旅に出かけてみてください。

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