秋草

秋草（あきぐさ）

秋草は、大日本帝国海軍が開発した訓練用滑空機であり、元はロケット迎撃機「秋水」の訓練機として設計されています。この機体は海軍において識別符号MXY8が与えられ、陸軍においてはク13という識別符号が付けられましたが、特別な愛称はなく、そのまま「秋水滑空機」と呼ばれました。

開発の経緯

日本本土への空襲が激化する中で、秋水はドイツ空軍のMe163を基礎にして開発が始まりました。しかし、技術移転には多くの困難が伴い、ドイツからの資料はごくわずかでした。そこで、日本側は独自に設計を見直し、実用機の完成を待たずに、操縦士の養成を目的としたエンジンを持たない滑空機の開発に着手しました。

1944年12月26日、秋水の運用部隊に編成された海軍三一二航空隊の犬塚大尉によって、軽滑空機の滑空試験が行われました。試験は順調に進行し、操縦感覚には特に問題がなく、機体設計が良好であると評価されました。続く1945年1月8日には、実機に準じた重滑空機の試験も行い、こちらも良好な結果を出しました。これにより滑空機は「秋草」と名付けられ、生産と運用が開始されました。

設計の特徴

秋草の設計には、秋水と同じく金属製の胴体が用いられています。また、翼部は木製であり、重滑空機と軽滑空機の2つのバージョンが存在しました。軽滑空機は全木製の胴体を持つ設計がされており、胴体内にはバラストタンクがありました。このタンクに水を充填することで、帰還時の飛行特性を調整できるようになっています。

基本的な外形は秋水とほぼ同じですが、全幅に対して全長が短いため、縦方向の安定性に若干の不安が残りました。また、主翼にはエレボンが搭載されており、これにより昇降舵としての役割も果たしています。滑空機の曳航には、軽滑空機には二式陸上中間練習機、重滑空機には彩雲が用いられました。

運用の実際

秋草は、秋水の初飛行を待たずに生産と配備が急がれました。大量の搭乗員を短期間で養成するための策とされましたが、1945年8月10日には陸軍の秋草が訓練中に墜落事故を起こし、搭乗員が重傷を負うという事態も発生しました。終戦までに、軽滑空機は50から60機、重滑空機は2機が生産されました。また、モータージェット「ツ11」を搭載した秋花（MXY9）の設計も行われましたが、こちらは実際には製造されることはありませんでした。

仕様

• - 乗員: 1名
• - 全長: 6.05m
• - 全幅: 9.50m
• - 全高: 2.70m
• - 翼面積: 17.7m²

関連項目

• - 秋水
• - 秋花

秋草は、その特異な設計と運用方式を持ち、日本の航空技術において重要な役割を果たした機体として位置付けられています。

もう一度検索