秩序と正義

リトアニアの保守政党「秩序と正義」：歴史、綱領、そして終焉

リトアニアの政界において重要な役割を果たした保守政党「秩序と正義（Partija „Tvarka ir teisingumas“、略称: TTまたはPTT）」は、2002年に自由民主党（Liberalų demokratų partija、略称: LDP）として誕生しました。その設立は、ロランダス・パクサス元大統領らによるものでした。パクサス氏は、既存政党の腐敗と非効率性に不満を抱き、国民の政治不信を背景に新党を立ち上げました。

自由民主党は当初、既存政党への強い批判を基調とした活動を行い、政治への不満を持つ人々の支持を集めました。しかしながら、具体的な政策や明確な政治イデオロギーの欠如が指摘され、他の政党や行政機関からはポピュリズム的、あるいはナチズムやナショナリズムに通じるものだという批判も浴びました。特に、パクサス氏が2003年の大統領選挙に勝利した後、こうした批判はさらに強まりました。パクサス政権下では、大統領と官僚機構の対立が激化し、自由民主党は「既存権力との闘争」を主張することで、自身の正当性を主張することになります。しかし、パクサス氏は最終的に大統領を弾劾され、その後の党の運命にも大きな影を落としました。

2006年、自由民主党は「秩序と正義」へと党名を変更しました。公式な理由としては、他の政党との名称の重複による混乱の回避が挙げられていましたが、党内からはより保守的な方向への転換を反映したものだとの見解も示されています。この改名は、党の存続を賭けた重大な決断であったと言えます。

改名後も「秩序と正義」は、リトアニアの政界において一定の存在感を示しました。2012年には社会民主党、労働党との連立政権に加わるなど、国政運営に参画する機会も得ています。しかし、労働党との合併交渉が破談となるなど、党内にも様々な問題を抱えていました。また、2015年にはヴァレンティナス・マズロニス元党首とその息子らが離党するなど、党の分裂も目立つようになっていきます。さらに2018年には、党の創設者であるパクサス元大統領も離党しています。これらの離党は、党の内部抗争や政策路線をめぐる対立を反映していると考えられます。

2020年には、レミギユス・ジェマイタイティス党首が「秩序と正義」を解党し、アルトゥーラス・ズオカス、アルトゥーラス・パウラウスカス両氏と共に新党「自由と公正」を結成しました。この決断は、党の将来を見据えた戦略的な判断だったと推測できますが、長年にわたる「秩序と正義」の歴史に幕を閉じました。

以下、党首と選挙結果をまとめます。

党首

自由民主党

2002年 - 2003年：ロランダス・パクサス
2003年 - 2004年：ヴァレンティナス・マズロニス
2004年 - 2006年：ロランダス・パクサス

秩序と正義

2006年 - 2016年：ロランダス・パクサス
* 2016年 - 2020年：レミギユス・ジェマイタイティス

選挙結果

「秩序と正義」は、大統領選挙、国会議員選挙、地方選挙、欧州議会選挙など、様々な選挙に参加してきました。大統領選挙では、パクサス氏が2002～2003年の大統領選挙で当選しています。国会議員選挙では、2004年から2016年にかけて議席を獲得し、連立政権にも参加しました。地方選挙でも一定の議席を獲得しており、ヴィルニュス市長を選出するなど、地方政治にも影響力を持っていました。しかし、欧州議会選挙では、2019年には議席を獲得することができませんでした。

「秩序と正義」の歴史は、リトアニアの政治状況や国民の政治意識を反映したものです。党の設立から解党まで、数々の出来事を経て、リトアニアの政治発展に貢献した一方、内部抗争や離党問題など、課題も抱えていました。その歴史は、今後のリトアニア政治を考える上で重要な知見を与えてくれると言えるでしょう。

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