秩父鉄道テキ100形貨車

秩父鉄道テキ100形貨車は、かつて秩父鉄道に在籍した貨車です。

概要

1959年6月、日本車輌製造東京支店で30両（テキ101 - テキ130）が製造されました。30t積（1973年に荷重が1t増加され、31t積みとなりました）のボギー有蓋貨車で、社内では従来の木造貨車と区別するため「二軸ボギー鉄製有蓋車」と呼ばれていました。セメント会社所有の私有貨車でした。1958年に試作されたテキ50形（テキ51）を量産化したもので、同形式の試用結果に基づき、車体高さは150mm上げられています。日本国有鉄道（国鉄）ワム80000形の量産化は1960年のことであり、本形式は日本における側面総開き式貨車の実用化第1号として特筆されます。本形式は秩父鉄道の車籍でしたが、後継形式となるテキ200形は国鉄車籍となりました。

構造

袋詰めセメント輸送用で、フォークリフトによるパレット単位の荷役作業に対応できるよう側面の扉がすべて開く構造でした。扉はプレス鋼板製で、片側6枚です。車体は角張っており、袋詰めセメント専用として容積を抑制したため全高が低い独特のスタイルでした。屋根はビード付き平鋼板製の山形、妻面上部には通風口が取り付けられています。全長は13,150mm、全幅は2,732mm、全高は3,250mm、自重は18.0tです。台車は、スリーピース式の一体鋳鋼台車TR41を装備していました。

運用

国鉄直通車であり、識別のため番号に二重下線が付されていました。セメント会社のストックヤードのあった王子駅のほか、上信電鉄の南高崎駅などにも乗り入れました。しかし、袋詰めセメントはタンク車・ホッパ車によるバラ積み方式に移行すると必要がなくなり、1984年11月30日付けですべての車両が廃車となりました。

保存状況

かつてはテキ117が三峰口駅構内の秩父鉄道車両公園に保存されていましたが、現在では解体撤去されています。広瀬川原駅・武州原谷駅構内には本形式が多数留置されている他、秩父鉄道沿線には本形式が倉庫などとして活用されているケースも多数存在します。

保存車

テキ117 - 埼玉県秩父市 秩父鉄道車両公園（現在では解体撤去）

参考文献

澤内一晃「秩父鉄道 車両のあゆみ【後編】」鉄道ピクトリアル 1998年12月号(No.662)
* 貨車技術発達史編纂委員会 編「日本の貨車―技術発達史―」2008年、社団法人 日本鉄道車輌工業会刊

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