移動変電所

移動変電所（いどうへんでんしょ）

移動変電所は、通常の変電所の機能が停止する際や、一時的に電力需要が増加する場合に用いられる、可搬式の電力供給設備です。これにより、事故や工事による常設変電所の機能喪失時においても電力供給を継続することが可能となります。

概要

この設備は、通常の変電所で使用される開閉器、変圧器、整流器などを効率的に集約し、移動が容易にできるように設計されています。一般的な形態には、複数のトラックや鉄道車両に装備される高圧機器や低圧機器を利用する車載形と、コンテナに収納する可搬ユニット形があります。移動変電所の主な運用形式は、常設変電所の機能の代行と特定の電力供給先の一時的な需要に応じることです。

使用形態

移動変電所は、前述の理由により、以下の状況で利用されます。
1. 常設変電所の停止時の機能代行：予備がない状況や、主系統が故障した際に必要な電力供給を行います。これに対応するため、同等の変電能力を持つ大型の設備が必要とされます。
2. 特定の電力供給先の需要増への対応：例えば、イベントや季節的な理由で一時的に高い電力が求められる場合に使用され、迅速な設置と撤去が求められるため、コンパクトなタイプが多く用いられます。

実用例

日本では、移動変電所が主に電気鉄道の変電所機能の代行や、電力供給の一時的な補完が行われています。特に、高度経済成長期における電車の需要の急増に伴い、国鉄をはじめとする私鉄各社が移動変電所を導入し、需要の変化に柔軟に対応してきました。また、電力会社も、メンテナンス時や災害時のbackupとして移動設備を保有しています。

例として、1960年代に設計された南海電気鉄道の移動変電所は、昇圧工事の代替や電力需要の急増に対応するために製造されました。この移動変電所は、特定の変電所の機能を代行する柔軟な役割を果たしました。

工事や災害で電力インフラが破壊された地域への支援として、移動変電所が提供されることもあり、イラクなどの戦後復興支援の例が挙げられます。

日本国有鉄道の例

戦時中、変電所の破壊に備え、簡易的な移動変電車が計画されました。その後、戦後に実際の運用を開始し、国鉄の鉄道網の広範さと多様な立地に対応するとともに、効率的な設備構成の必要性が明らかになりました。これにより、電力を動的に供給できる形態へと進化し、トレーラー型の移動変電所や、モジュール型の可搬形変電所が採用されています。

付随車形移動変電所

この形態は、整流器、変圧器、開閉器をそれぞれ異なる車両に搭載した構成を持ちます。稼働率向上のために、整流器車の保有数を増やす点が特に重要でした。

可搬形変電所

常設変電所同様の機器をモジュール化し、設置が容易な形態にしたものです。この方式は取り扱いや維持費、価格において最も実用的であるとされています。

まとめ

移動変電所は、必要に応じて驚異的に迅速な電力供給を実現するための重要なインフラです。その多様な運用形態と実績は、電力供給が求められるさまざまな状況において対応可能な柔軟性を提供します。これにより、社会全体の電力需要に適応し、さまざまな要求に合わせた運用が重要視されています。

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