種子島久珍

種子島久珍（たねがしま ひさみち）は、文政5年（1822年）に薩摩藩（鹿児島藩）の家臣である種子島氏の24代当主として生まれました。幼名は報七郎、初名は時珍、受領名は弾正といい、字は異なりますが、養父である久道と同じ読みの名前を持っています。

生涯

久珍は、薩摩藩の隠居であった島津斉宣の12男として江戸で生まれました。天保13年（1843年）に、10代藩主である異母兄の島津斉興の命により、種子島氏を継ぐことになり、生まれて初めて鹿児島へ向かいました。種子島氏は、先代当主である久道が亡くなってから15年も当主不在の状態が続いており、久珍は待望の養子でした。

当初、種子島家側では、先代当主の娘婿として久珍を迎える予定でしたが、久道の娘たちは久珍が養子に決まる前に結婚して他家に嫁いでしまっていました。そのため、養母である松寿院の取り計らいで、島津家有力一門の加治木島津家・島津久徳の次女である信を正室に迎えることになりました。

その後、種子島氏の家臣団は、前藩主の息子を養子に迎えたことを根拠として、他の島津家御一門衆と同様に種子島氏の家格を引き上げるよう陳情し、その要望が受け入れられたようです。久珍が養子として来たときはまだ若年であったため、政務は養母である松寿院が行っていました。信との間には子供にも恵まれましたが、嘉永7年（1854年）に急逝しました。享年33歳という若さでした。

嫡子の久尚は生まれたばかりの乳児であったため、再び松寿院が種子島家の政務を司ることになりました。久珍の短い生涯でしたが、種子島氏の家格向上に大きく貢献しました。

家族

実父：島津斉宣（9代薩摩藩主）
実母：側室（橘川時吉の娘）
養父：種子島久道　※但し養子が決定した時点では既に死去。
養母：松寿院（久道正室、久珍異母姉）
正室：信（天保元年8月-明治16年4月23日）
長女：英（フサ、弘化2年5月27日-弘化3年8月3日）
次女：初（ハツ、弘化3年10月4日-、島津久明妻→離婚）
三女：雄（タケ、嘉永元年4月10日-、鎌田政正妻）
長男：久尚

参考文献

『種子島氏家譜』（『鹿児島県史料』家分け8所収）

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