稲川組と東声会の対立事件

稲川組と東声会の対立事件の全貌

本事件は1963年の夏の終わりに東京で発生し、稲川組と東声会の間に深刻な対立をもたらしました。稲川組は後に稲川会と名を変え、その組長には稲川角二が就任します。一方の東声会は、後に東亜会と改称され、会長の町井久之（本名：鄭建永）が組織を率いていました。

対立の発端

事件は、東京都港区赤坂の「ホテルニュージャパン」にあるナイトクラブ「ニューラテンクォーター」での一幕から始まりました。稲川組の幹部である井上喜人が町井に「町井君」と声をかけたことで、町井は激怒し「君呼ばわれする覚えはない」と反論します。

井上の若衆が町井に対して襲撃を試みましたが、井上は止めに入ります。その後、井上は「いずれ話をつける」と言い残し、ナイトクラブを後にしました。

招集と宣戦布告

同日、井上は神奈川県湯河原の「のぞみ旅館」にて、稲川組の主要メンバーを招集しました。翌日の午前0時ごろ、旅館の大広間に150人以上の稲川組の組員が集まり、井上は彼らに対し東声会との全面的な抗争を宣言します。

しかし、長谷川春治が井上に「稲川角二はこの抗争を了承したのか？」と問いただすと、井上は稲川に了承を得るために再度湯河原へと向かいます。

当時、稲川角二は横須賀にある道場で相撲のイベントを行っており、井上が抗争の許可を求めても承認されませんでした。稲川の裏には影響力を持つ右翼活動家・児玉誉士夫が存在し、町井はその側近だったため、対立を煽ることは現実的ではなかったのです。

複雑な関係と暗示

その後、午後9時に児玉が稲川と町井を呼び出し、町井が稲川に対して抵抗意志がないことを告げる場面がありました。稲川は井上に非礼を詫び、両者は冷静さを欠いた衝突を避けようとしました。

同じ日、横浜市の「横浜ホテル」において、横山が森田に「稲川が井上を破門しないのであれば、井上を始末しろ」と指示を出す一幕がありました。これは、稲川の意向に反して、暴力的な解決法を示唆するものでした。

その後、稲川は横山と相談の結果、井上を破門するのではなく、堅気に戻す方針を取りました。最終的に、稲川は井上にヤクザからの引退を求めることになります。井上は一時的に組を離れますが、彼の仲間は引き続き稲川組に残るという結果になりました。

結び

この対立事件は、稲川組と東声会という、当時の暴力団界において重要な組織間の緊張関係を浮き彫りにしました。組織間の力関係や人間関係が、暴力団の運営や抗争にどのように影響を与えるのか、当事件を通じて多くのことが学ばれるでしょう。

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