稲川組と芳浜会の抗争事件

稲川組と芳浜会の抗争事件

1962年9月16日から18日にかけて、稲川組と芳浜会という二つの暴力団組織間で発生した抗争事件。

事件の背景

1961年10月、岐阜を拠点とする博徒、池田一家の幹部であった坂東光弘が稲川組傘下に入り、稲川組岐阜支部長に就任。翌1962年4月には、稲川裕芳が岐阜市で興行を主催するなど、稲川組の勢力が岐阜県に進出していました。

しかしその一方で、坂東光弘は、芳浜会の幹部である菊田吉彦、瀬古安会の鈴木康雄、そして芳浜会の杉本重太らと対立関係にありました。これらの対立が、後の抗争事件の火種となります。

事件の発生

1962年9月16日午後9時過ぎ、坂東光弘がタクシーで移動中、芳浜会杉本派の組員に襲撃され、銃撃を受け死亡しました。同日夜、犯人の芳浜会組員は警察に自首しています。

坂東の暗殺を受け、稲川組は報復を開始。林喜一郎は神奈川県から岐阜へ向かい、東京からも稲川組の幹部が組員を率いて岐阜へ集結しました。その数、最終的には200名を超えたと言われています。

9月17日午前3時45分頃、林喜一郎らが岐阜駅前に到着すると、そこには芳浜会の組員約200名が待ち構えていました。その後、石井隆匡率いる稲川組組員も到着し、岐阜駅周辺は異様な緊張感に包まれました。芳浜会も応援を呼び、組員は300名近くに膨れ上がりました。

事態を重く見た警察は、岐阜駅周辺に300名以上の警察官を配備し、警戒を強化しました。

その後、稲川組組員は岐阜市内の旅館に分散して待機。林喜一郎は「若松旅館」に滞在し、妻らが拳銃を組員に届けました。

同日夜、林喜一郎は芳浜会の西松政一会長に電話をかけ、坂東光弘の弔いのために若松旅館に来るよう要求。その後、警察が芳浜会事務所を訪れ、騒動を起こさないよう警告しました。

午後11時過ぎ、西松政一は芳浜会の幹部を伴い、若松旅館へ向かいました。

和解

午後11時30分頃、西松政一は若松旅館に到着し、林喜一郎、石井隆匡、田中敬、山川修身らと会談しました。西松政一は、坂東光弘を芳浜会組員が殺害したことを謝罪。これにより、稲川組と芳浜会の間で和解が成立しました。

事件後

1962年9月18日午後1時、岐阜市内の稲川組支部で坂東光弘の葬儀が執り行われました。葬儀には、岐阜市に集結した稲川組組員200名以上が参列しました。

同日、稲川角二は林喜一郎からの電話で和解を了承し、林喜一郎に岐阜市に集まった組員全員の引き上げを命じ、抗争は終結しました。

参考文献

大下英治『首領　昭和闇の支配者　三巻』大和書房＜だいわ文庫＞、2006年、ISBN 978-4-479-30027-4 のP.226～P.231

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