稲村三伯

稲村三伯の生涯と業績

稲村三伯（いなむら さんぱく）は、宝暦8年（1758年）に現在の鳥取市川端に生まれました。若い頃は龍介という名前で呼ばれ、後に箭と名付けられ、白羽という字を持ちます。彼は江戸時代後期の偉大な蘭学者として知られ、その教育・医療の分野において著しい功績を残しました。

三伯は町医である松井如水の三男として生まれ、明和7年（1770年）に藩医・稲村三杏の養子として家業を継ぐこととなります。彼は明和8年（1771年）に藩校・尚徳館で学び始め、続いて安永5年（1776年）には福岡に赴き、亀井南冥のもとで医学と儒学を学びました。その後、彼は長崎に行き、蘭方医学の修行を続けます。

天明元年（1781年）、父である三杏の死去により藩医を引き継ぐも、さらなる学びを求めて京都で医学を研鑽しました。この時期、彼は大槻玄沢の『蘭学階梯』に触発され、知識の向上を目指します。

寛政4年（1792年）、江戸に進出し、藩邸で勤務しながら玄沢の部下として蘭学を学び続けます。そしてその業績の一環として、寛政8年（1796年）に永きにわたる努力の果てに日本初の蘭和辞書『ハルマ和解』を完成させ、共同執筆者である長崎の通詞、石井恒右衛門や同門の桂川甫周、宇田川玄真の協力を得難い成果を挙げました。

しかし、享和2年（1802年）には家庭の事情で退藩し、下総海上郡などを遍歴しつつ、海上随鴎と改名して医業を営むことになります。文化3年（1806年）には京都に戻り、蘭学塾を開きます。その結果、京都や大坂での蘭学の興隆を実現する一助としました。

晩年の稲村三伯は、蘭学の普及に尽力し、多くの弟子を持つようになります。彼は文化8年（1811年）1月16日に54歳でこの世を去りますが、その功績は後々まで語り継がれることとなりました。明治44年（1911年）には、彼の業績が評価され従四位が追贈されています。

家族については、彼の娘である定が中天游の妻となりました。また、稲村家は三伯を含む多くの蘭学者を輩出しており、医学の分野で活躍した人物で構成されています。

三伯の業績は持続的な影響をもたらし、彼の名声はその後の蘭学の振興に大いに貢献しました。彼の書物、特に『ハルマ和解』は、蘭学界における画期的な文献として位置付けられています。

このように稲村三伯の人生と業績は、日本の蘭学の発展を語る上で欠かせないものであると言えるでしょう。今後も学問の道を志す者たちにとって、彼の精神は大切な指針として受け継がれていくことでしょう。

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