稲毛氏

稲毛氏：武蔵国に興り、讃岐国へ至る一族の興亡

稲毛氏は、秩父氏の流れを汲む小山田氏の一族であり、武蔵国橘樹郡（現在の神奈川県川崎市北部周辺）を本拠地として勢力を拡大した武士団です。その起源は、平安時代末期の治承・寿永の乱に遡ります。

稲毛氏の成立

秩父平氏の系譜を引く小山田有重の三男である重成は、平家の郎党として京にいましたが、治承・寿永の乱を機に東国へ下向しました。院政期に立荘された稲毛荘（現在の神奈川県川崎市中原区・高津区一帯）に進出し、この地名を姓として稲毛氏を称するようになりました。

重成は、北条政子の異母妹を妻に迎え、鎌倉将軍家や北条家と姻戚関係を結び、一族の畠山重忠や弟の榛谷重朝とともに、治承・寿永の乱や奥州合戦で活躍しました。これらの功績により、鎌倉幕府の成立において重要な役割を果たしました。

稲毛氏の勢力拡大と拠点

稲毛氏は、多摩川沿いの登戸に枡形城を、また、現在の東京都稲城市と隣接する神奈川県川崎市多摩区菅には小沢城を築き、勢力を拡大しました。川崎市多摩区枡形にある広福寺は、稲毛氏の領主館跡と伝えられ、現在もその遺構を見ることができます。

稲毛氏の滅亡とその後

稲毛氏は、鎌倉幕府成立後、1205年に同族の畠山氏と北条氏との抗争に巻き込まれ、三浦義村によって滅ぼされました。一族の多くは討ち死にしましたが、生き残った人々は讃岐国阿野郡（現在の香川県綾歌郡）や鵜足郡（現在の香川県丸亀市周辺）へと落ち延びました。

讃岐国に逃れた稲毛氏の一族は、その後、地域で最も大きな庄屋の家系として繁栄しました。現在、香川県立文書館では『稲毛家文書目録』を閲覧することができ、当時の稲毛氏に関する貴重な資料が残されています。

稲毛氏の系譜

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　秩父重弘
　　┣━━━━━┓
　畠山重能　　小山田有重
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　畠山重忠　　稲毛重成　　　　　　　　　　榛谷重朝　森行重　田奈有朝　小山田重親
　　　　　　　　┣━━━━━━━━┳━━━━━━┓
　　　　　　　稲毛（小沢）重政　宇都宮頼綱室　綾小路師季室

異流

なお、稲毛氏には、千葉氏系馬加氏族の系統である下総稲毛氏も存在します。

関連事項

秩父氏
稲毛重成
川崎市
稲城市
多摩区
まんのう町

脚注

* 『稲毛家文書目録』香川県立文書館蔵

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