稲荷前古墳群

稲荷前古墳群について

稲荷前古墳群（いなりまえこふんぐん）は、神奈川県横浜市青葉区大場町に位置する古墳の集まりです。この地域には、多様な形状の古墳が密集しており、かつては「古墳の博物館」と称されていました。残念ながら、現在ではわずか3基が残るのみですが、古えの首長たちの墓が存在した重要な歴史的遺跡であるとされています。

位置と周辺環境

稲荷前古墳群の最寄り駅は、東急田園都市線の市が尾駅です。この地域は、横浜上麻生道路に接した丘の上に広がっています。古墳群は、4世紀から7世紀にかけて築かれ、有力な首長が治めていたとされる谷本川流域の都筑エリアに位置しています。さらに、市ヶ尾町周辺では他にもいくつかの古墳や横穴墓が発見されています。

発見の経緯

1965年には、横浜市が港北ニュータウン計画を発表し、土地開発が進められる中で稲荷前古墳群が発見されました。この地域は直接的なニュータウンの開発エリアではありませんでしたが、田園都市線の開通により周辺の宅地整備が進められていました。古墳群は1967年6月に発見され、考古学者たちによって発掘調査が実施されました。

その結果、前方後円墳や前方後方墳、円墳、方墳といったさまざまな形態の古墳が確認され、その数は合計で10基に及びました。また、横穴墓も9基発見されました。これにより、稲荷前古墳群はその名の通り「古墳の博物館」として知られるようになりました。

保存運動と難航する保存

古墳群は貴重な発見であり、保存運動が奨励されましたが、当時の横浜市長は保存に積極的ではなく発言が物議を醸しました。特に、開発が進む中で、前方後円墳の周囲が工事によって削り取られていったことは、古墳の保存にとって大きな障害となりました。発掘に参加した学者は、この状況を開発業者の意図的な措置であると指摘しています。残念なことに、大部分の古墳が破壊され、その場所は住宅地として変貌してしまいました。

現在の状況

現在、稲荷前古墳群には前方後方墳の16号墳と、方墳の15号および17号墳の3基が残されています。1970年には神奈川県の史跡として指定され、遺跡の重要性が再評価されています。面積は8056.63m²で、管理は横浜市が行っています。

この古墳群は、地域の歴史と文化を知る上で重要な資源であり、今後もその保存と研究が求められる場所であると言えるでしょう。

もう一度検索