稲荷山観音寺金剛院

稲荷山観音寺金剛院の歴史

稲荷山観音寺金剛院は、かつて福岡県柳川市京町（旧瀬高町）に位置していた真言宗当山派の寺院です。この寺院は、旧柳河藩主である立花氏の祈願所としての役割を担っていました。本山は京都の醍醐寺三宝院で、その格式の高さがうかがえます。

開基と由来

金剛院の開基は立花忠茂公で、開山は金剛院信誉法印です。寛永15年（1638年）の島原の乱後、御城中ノ島にあった立花家の守護神「稲荷神」を本尊として遷宮されました。この遷宮は、戦乱後の混乱を鎮め、藩の安泰を祈願する重要な出来事でした。

信誉法印の父である金剛院密乗は、紀州熊野権現之座主正覚院僧正即傳の第二子であり、天正年間に九州へ下向しました。密乗は、六峰の一つである寶満山（竈山）で修行を積みました。天正14年の島津の動乱の際には、懇意にしていた「寶満山」の座主、浄戒坊隆全より立花山城の立斎（宗茂）様へ「御利運御増長」の祈祷を依頼され、立斎公へ「御陣御袈裟矢御除御札守」を献上しました。この出来事以降、歴代藩主の代替わりごとに熊野権現への代参が行われるようになりました。

歴代院主

金剛院は、多くの院主によって維持されてきました。以下は、その主な院主たちです。

金剛院密乗（1535年～1621年）
金剛院信譽
金剛院実譽
金剛院元真
金剛院信雅（1674年～1739年）
金剛院本教
金剛院快道（1743年～1823年）
金剛院密音（1768年～1830年）
金剛院快音（1795年～1832年）
金剛院快成（1803年～1859年）
金剛院密乗（1824年～1878年）
永井雪丸（1855年～1921年）

これらの院主たちは、それぞれの時代において寺院の維持、発展に尽力しました。

祭神

金剛院では、以下の神々が祀られていました。

太郎稲荷：ダキニ天稲荷とも呼ばれ、立花山城の護軍神でした。
棚倉稲荷：元和5年に奥州棚倉に勧請されました。
冥加嶋稲荷：享保19年7月に勧請されました。
聚幸神霊：貞俶公を祀り、享保17年3月に勧請されました。
金毘羅宮：好雪公の信仰によって勧請されましたが、秘仏とされていました。
幸光神、幸如神：鑑備公が天保8年8月に勧請し、聚幸神の御子神とされています。
* 照柳大明神：誾千代姫の霊神を祀っています。

これらの祭神は、寺院の信仰の中心であり、地域の人々の心の拠り所となっていました。

明治の神仏分離とその後

明治時代になると、神仏分離・修験道廃止令により、金剛院は廃寺となりました。しかし、その歴史と文化的意義は今日まで語り継がれています。寺院の建物は現存していませんが、かつてこの地に存在した金剛院は、地域の歴史と信仰を語る上で重要な存在です。

まとめ

稲荷山観音寺金剛院は、立花氏の祈願所として、また地域の信仰の中心として重要な役割を果たしてきました。その歴史は、当時の政治や宗教、文化を理解する上で貴重な手がかりとなります。現在は廃寺となっていますが、その名は今もなお多くの人々に記憶されています。

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