稲賀敬二

稲賀敬二：平安文学研究の第一人者

稲賀敬二(1928年-2001年)氏は、日本の国文学界において卓越した業績を残した平安文学の研究者です。広島大学名誉教授の称号を持ち、美術史家としても名高い稲賀繁美氏の父としても知られています。

初期の経歴と研究活動

1928年、旅順市明治村に生まれ、鳥取県境港市を本籍地とします。広島高等学校を経て、1950年に東京大学文学部文学科を卒業しました。在学中には、池田亀鑑氏のもとで『源氏物語大成』や『源氏物語事典』といった大規模なプロジェクトに関わり、貴重な経験を積みました。大学院特別研究生を経て、1956年には立教大学一般教育部講師、同年広島大学文学部講師に就任します。

広島大学での貢献

広島大学では、講師から助教授、教授へと昇進し、1968年には『源氏物語の研究 成立と伝流』によって東京大学国語国文学会賞を受賞するなど、研究者としての地位を確立しました。同大学では、大学教育研究センター長、消費生活協同組合常務理事、評議員、文学部長、大学院文学研究科長など、多くの要職を歴任し、大学運営にも大きく貢献しました。

晩年の活動と没後

1990年には放送大学客員教授、広島ビデオ学習センター準備室長、広島大学名誉教授、放送大学広島ビデオ学習センター長を兼任。1993年には安田女子大学文学部教授に就任し、学長補佐や大学院文学研究科日本語学文学専攻長などを務めました。2001年に安田女子大学を退職、同年4月11日に73歳で逝去しました。

稲賀敬二氏の没後、未発表の論文をまとめた『稲賀敬二コレクション』(全6巻)が刊行され、その研究成果は現在も広く学界に影響を与えています。

研究業績

稲賀敬二氏の研究は、主に源氏物語を中心に、平安時代の文学作品成立や伝播に関するものです。その研究は、単なる文学作品分析にとどまらず、物語の流通機構や当時の社会状況との関わりにも及ぶ包括的なものでした。『源氏物語の研究 成立と伝流』を始め、『紫式部 源氏の作者』、『源氏物語の研究 物語流通機構論』など、多くの著作が出版されており、これらは日本の古典文学研究に大きな足跡を残しました。また、『枕草子』や『落窪物語』などの古典作品に関わる校注・翻訳作業にも携わっています。

学問への貢献

稲賀敬二氏は、単なる研究者としてだけではなく、教育者としても大きな役割を果たしました。広島大学や安田女子大学で多くの学生を指導し育成したことは、後進の育成という点でも大きな貢献といえます。また、放送大学での活動を通じて、より幅広い層への古典文学の普及にも尽力しました。

まとめ

稲賀敬二氏は、その生涯を通じて平安文学研究に深く関わってきました。その業績は、数多くの著作や教育活動を通して現代に伝えられ、日本の古典文学研究に多大な貢献を果たしたと言えるでしょう。彼の研究は、今後も多くの研究者や学生に影響を与え続け、平安文学研究の発展に寄与し続けるものと期待されます。

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