空洞です

アルバム『空洞です』の概要

『空洞です』（くうどうです）は、サイケデリック・ロックバンド・ゆらゆら帝国の11作目であり、彼らにとって最後のオリジナルアルバムです。この作品は2007年10月10日にソニー・ミュージックアソシエイテッドレコーズよりリリースされました。アルバムの規格品番はAICL-1877です。

このアルバムは、前作『Sweet Spot』から約2年のブランクを経てのリリースであり、バンドにおけるラストアルバムでもあります。興味深いことに、2006年にリリースされたシングル「つぎの夜へ／順番には逆らえない」は本作には収録されていませんが、翌年に発表されたシングル「美しい」からは、アレンジを変えた「美しい」と「なんとなく夢を」の2曲が収められています。

制作の背景

ボーカルとギターを担当する坂本慎太郎は、このアルバムを「過去最高の完成度」と位置づけ、バンドとして「完全に出来上がってしまった」とまで語っています。この評価はバンドの解散を示唆しているとも解釈できます。また、アメリカのDFAレコーズからは『Hollow me / Beautiful』というタイトルでリリースされ、アルバムには『空洞です』に加え、シングル「美しい」の4曲を含めた全14曲が収められています。

坂本は、CDジャーナルの望月哲とのインタビューで、これまでのアルバム制作におけるアプローチを語りました。彼はこれまで、アルバムのテーマをより大まかに捉えていたものの、今回の作品では「空っぽな感覚」という明確なテーマを設定したことが、統一感を生む要因となったと語ります。具体的には、様々な音楽的要素がテーマに反することがないよう工夫したとのことです。

音楽的特徴

坂本は、「とりとめのない演奏」を追求し、トレモロが多用されたギターの音色や、曖昧なコードが使われることで、独特な音の世界が築かれています。彼は人工的なヴォーカルを取り入れたことで、逆に感情的に響く一面もあり、聴く者に多様な解釈の余地を与えることができたと振り返っています。

収録曲

全ての楽曲の作詞は坂本慎太郎、作曲はゆらゆら帝国によって手掛けられています。代表的な収録曲には以下が含まれます：
- おはようまだやろう
- できない
- あえて抵抗しない
- やさしい動物
- まだ生きている
- なんとなく夢を (Album Version)
- 美しい (Album Version)
- 学校へ行ってきます
- ひとりぼっちの人工衛星
- 空洞です

本アルバムにはまた、アメリカでのリリースに際し収録された楽曲もあり、独特の雰囲気を醸し出しています。

タイアップと評価

「空洞です」は、2009年1月31日に公開された映画『愛のむきだし』の主題歌として使用されました。この映画では、他に「美しい(Album Version)」や「つぎの夜へ」も使用されるなど、作品の一部として重要な役割を果たしました。また、2013年には「キリン 本搾りチューハイ」のテレビCMソングとしても採用されました。

音楽評論家の望月哲は「アルバム全体には起承転結やカタルシスもない上、ロックの定型も無視している」と指摘しつつも、ミニマル・テクノのような無機質なリズムと浮遊感のあるギターの音色によって、「また聴きたい」と思う衝動を与える作品であると評価しています。まるで、とびきりおいしいドーナッツの真ん中だけを食べるような感覚が、何度でも繰り返し楽しみたくなる魅力をもっているのです。

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