突撃大隊

第一次世界大戦におけるドイツ突撃大隊：塹壕戦を打破した精鋭部隊

第一次世界大戦中、膠着状態に陥った塹壕戦を打破するため、ドイツ軍は「突撃大隊（Sturmbataillon）」を編成しました。本記事では、その誕生から終戦までの活動、戦術、装備、そして後の軍事思想に与えた影響について詳しく解説します。

突撃大隊の誕生

1915年3月、第18工兵大隊長のカルソー少佐によって最初の突撃部隊が編成されました。工兵が中心となったのは、彼らが攻囲戦の訓練を積んでおり、強固な塹壕を突破する新たな戦術を創造するのに適していたためです。敵の側防機関銃に対抗するため、37ミリ軽砲が開発されましたが、初期の作戦では砲撃によって大きな損害を受け、戦術の見直しが迫られました。

突撃大隊の編成と訓練

1915年から1917年にかけて、志願兵による突撃大隊への入隊が行われました。当初、入隊基準は非常に厳しく、選抜された兵士は肉体鍛錬を中心とした過酷な訓練を受けました。この訓練は、従来の軍隊のような上意下達ではなく、個人の特性や自発性を重視するものでした。訓練内容は、手榴弾の投擲、鉄条網の除去、塹壕の掃討、火炎放射器部隊との連携、弾幕射撃の追従など、多岐にわたりました。

特攻隊（Stoßtruppen）の発足

1916年、ヴィリー・ローア大尉は、従来の突撃部隊に代わる「特攻隊（Stoßtrupp）」の創設を提唱しました。4～8人の兵士で構成される特攻隊は、下士官の指揮下で無人地帯を突破し、敵の塹壕に侵入して手榴弾で攻撃、支援兵器で敵の拠点を破壊することを目的としていました。この戦術は、1916年版の歩兵操典に追加され、新兵を迅速に塹壕戦に投入することが可能になりました。

大戦末期の突撃大隊

1918年の西部戦線における最初の攻勢「カイザーシュラハト」では、多数の突撃大隊が投入されましたが、戦略的な突破口を開くことはできませんでした。大戦末期には兵力の消耗により、突撃大隊は中隊規模にまで縮小されました。また、兵士の意欲低下から、突撃大隊は選抜された兵士で構成される「攻撃師団（Angriffsdivisionen）」に再編されました。

突撃大隊の装備

初期の突撃歩兵はGewehr 98小銃を装備していましたが、塹壕戦には不向きとされ、短銃身型のKarabiner 98aが配備されました。また、塹壕での近接戦闘用にMP18短機関銃や柄付き手榴弾が多用されました。支援火器としては、軽機関銃08/15や鹵獲兵器のルイス軽機関銃、火炎放射器などが使用されました。

突撃歩兵の名称について

突撃歩兵は、ドイツ語の「Stoßtruppe（衝撃部隊）」の訳語です。日本では「突撃」と翻訳されていますが、本来の意味は「衝撃」であり、英語では「shock troops」と訳されます。ドイツ軍では、射撃と運動に合わせて衝撃を重要視していました。

突撃大隊の戦術

突撃歩兵は、第一次世界大戦で塹壕を突破するために浸透戦術を行うための部隊として編成されました。浸透戦術では、敵の防御線の弱点を突き、後方へ浸透して拠点を攻撃することで、敵の戦線を崩壊させることを目指しました。

突撃大隊の影響

突撃大隊の戦術や思想は、後の軍事戦略に大きな影響を与えました。特に、兵士間の連帯感や個人の能力を重視する姿勢は、第二次世界大戦における武装親衛隊のモデルになったと言われています。

エルンスト・ユンガーの『鋼鉄の嵐の中で』は、突撃歩兵の現場を詳細に描いた貴重な記録です。また、ゾンダーコマンド・エルベやアゴスティーノ・ランツィッロなど、突撃歩兵として活躍した人物も存在します。

突撃大隊は、第一次世界大戦における新たな戦闘様式を切り開いた革新的な部隊でした。その戦術や思想は、後の軍事戦略に大きな影響を与え、現代においても研究され続けています。

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