立田輪中人造堰樋門

立田輪中人造堰樋門

立田輪中人造堰樋門（たつたわじゅうじんぞうせきひもん）は、愛知県弥富市に所在し、その独特な歴史と構造から弥富市指定の文化財に指定されています。この樋門は、かつて農業に必要な排水を行うために鍋田川（木曽川の支流）への排出を目的として設計されました。また、「中山樋門」とも呼ばれ、地域の人々に親しまれてきました。周囲の整備された輪中公園は、訪れる人々に自然と文化を享受する場を提供しています。

樋門の規模と構造

この樋門は全長約26メートル、全幅約9.5メートル、そして水面からの高さは約8メートルに及びます。また、樋門は水路の橋としても機能しており、採用されている材料については、欄干部分や階段が人造石モルタル仕上げで、上部には間知石積みが使用されています。樋門の下部には煉瓦で造られた水路部分があり、4つのアーチ状の水路が設けられています。さらに上流側の中央には木製の門扉が2か所あり、それを引き上げる機構も現在も残っています。

歴史的背景

この樋門は明治時代に建設されたもので、当時行われた木曽三川分流工事によって、地域の水利が大きく影響を受けました。特に佐屋川が廃川となり、悪水の排出先であった鵜戸川の機能も低下しました。そのため、1901年に立田輪中悪水用水普通水利組合が設立され、旧佐屋川の河道跡を利用して「佐屋川用水」を開削することになりました。そして新たに鵜戸川を延長し、中山に樋門を設置して悪水を鍋田川に排出する計画が持ち上がることになります。

当初、この工事には愛知県からの県費の援助が期待されましたが、それは叶わず、地元の水利組合が勧業銀行から資金を借りて工事を進める必要がありました。この資金は、現在の金額にして2～3億円相当とされ、1902年には樋門を含む工事が完了しました。

完成後の課題

しかし、期待されていた排水機能は実際にはあまり发挥されませんでした。想定されていた排水能力の不足は、設計上の問題や、周囲の水位上昇などが影響していたからです。結果的に、樋門からの排水は困難であったため、逆潮用水樋門として農業用水の取水に使われることとなりました。この取水によって、鵜戸川まで10キロメートル以上水が遡上した事例もあります。

その後の状況は、1950年に排水機が設置されるまで恒常的な排水の問題が続きました。樋門は立田輪中や海部郡南部において、農業用水の確保に寄与しましたが、年月が経つにつれて地盤沈下が進み、鍋田川の塩分濃度が上昇したため、その役割は終焉を迎えました。1959年には伊勢湾台風によって流域が大きな被害を受け、その結果として鍋田川の分派口が締め切られました。

文化財としての指定

1975年にはこの樋門が水利組合から弥富町に譲渡され、1978年には弥富町の有形文化財に指定されました。また、2005年には土木学会によって「近代土木遺産 現存する重要な土木構造物2800選」に選ばれ、2009年には経済産業省によって「近代化産業遺産群」の構成遺産に認定されました。これにより、立田輪中人造堰樋門は、地域歴史と現代の土木技術の証人として高く評価されています。

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