竪破山

竪破山の概要

竪破山（たつわれさん）は、茨城県高萩市と日立市の境界に位置する、標高658.3mの山です。この山は多賀山地の中央部に立ち、周囲の風景において特に目立つ存在になっています。南側から見ると高鈴山（623m）を除いて600mを越える山がないため、登山客や観光客にとって一目でわかる名峰です。古くから角枯山や黒前山とも呼ばれており、花園花貫県立自然公園に指定されています。

地形と地質

竪破山の山頂部分は、標高620m前後の阿武隈高地における小さな起伏面から突き出しており、高さ30mの残丘として特徴付けられています。山の南側には古い崩壊地形が見られ、その影響で一部は崩落の崖となり、土石流の跡が登山道に見受けられます。地質的には、中生代白亜紀前期に形成された阿武隈花崗岩類から成り、細粒の黒雲母花崗岩が主成分となっています。

山名の由来

竪破山はもともと角枯山（つのかれやま）という名前で知られていましたが、紀元前80年頃、黒坂命がこの地で病を患い命を落としたことから黒前山という名前に変わりました。江戸時代には、武将八幡太郎源義家にちなんで、西山公徳川光圀が特定の岩に「太刀割石」と名付けたのが、竪破山という名前の起源となっています。

歴史的背景

江戸時代まで、竪破山は巨石や山岳信仰の対象とされてきました。山頂には黒坂命を祭神とする黒前神社があります。この神社は、坂上田村麻呂が東征の際に社殿を再建し、日吉山山王権現と名付けて別当寺も設けたことが起源とされています。天保年間には、水戸藩の第九代藩主が社名を現在の「黒前神社」に改称し、信仰を継承してきました。1080年には、源義家が戦勝祈願を行い、夢の中で神から与えられた太刀を大岩に振り下ろし、その岩が二つに割れたとの伝説も残っています。

自然の奇石と滝

竪破山の周辺には、太刀割石をはじめとする多くの奇石や滝があります。特に「七奇石三瀑」として知られるこれらのスポットは、小さな崖や滝とのコントラストが美しく、訪れる人々の目を引きます。不動石や神楽石、烏帽子石など、多様な形状の岩が観察できる他、不動滝、剣滝、龍馬滝と呼ばれる滝も登山者に人気の場所です。これらの自然の造形は、風化によるものや土石流が運んできたものなど、様々な地質的なプロセスを経て形成されてきました。

登山道の情報

竪破山へは、高萩市側の米平登山口や、日立市側の二ノ鳥居登山口からアクセス可能です。特に二ノ鳥居登山口には駐車場やトイレが整備されており、道中には炭焼き窯や太刀割石が点在しています。訪れる際には、常磐自動車道日立北ICからのアクセスが便利です。竪破山は、自然の美しさや豊かな歴史が感じられる場所として、登山愛好者や観光客にとって興味深いスポットとなっています。

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