端午節会

端午節会（たんごのせちえ）

端午節会は、5月5日の端午の節句に宮中で行われた重要な儀式です。五日節会（いつかのせちえ）とも呼ばれます。

概要

中国から伝わった端午の風習に倣い、日本でも古くから5月5日に薬猟（くすりがり）を行う風習がありました。『日本書紀』には推古天皇19年（611年）に薬猟に関する記述が見られます。大宝律令以後、雑令に端午雑会が規定されましたが、一時的に中断された時期もありました。『続日本紀』には、天平19年（747年）に聖武天皇が端午節会を再興したことが記されています。

端午の日には、天皇が馬が走る様子を鑑賞する儀式が古くから行われていました（『続日本紀』大宝元年（701年））。これが後に騎射（きしゃ）の儀式へと発展していきます。平安時代初期に編纂された『内裏式』には、5月5日を「観騎射式」の日と規定し、同時に中務省と宮内省がそれぞれの被官である内薬司と典薬寮を率いて、邪気を払い長寿をもたらすとされる菖蒲草（しょうぶそう）と薬玉（くすだま）を献上しました。薬玉は皇太子以下の参加者に下賜され、参加者は菖蒲で作った鬘（かずら）を冠につけて参列しました。

また、宇多天皇の寛平年間には、当時民間に広まっていた粽（ちまき）を食べる慣習が宮中にも取り入れられました。このように、端午節会は中国伝来の風習を基盤としつつ、日本の宮廷文化の中で独自の発展を遂げた行事といえます。

端午節会は、単なる年中行事にとどまらず、天皇を中心とした宮廷社会の秩序や権威を示す場としての役割も担っていました。儀式を通じて、天皇の長寿と国家の安寧が祈願され、参加者たちは菖蒲や薬玉といった象徴的な品々を身につけることで、邪気を払い、健康を願ったのです。また、粽を食べる習慣は、民間の風習が宮廷に取り入れられることで、天皇と民衆との繋がりを象徴するものとなりました。

このように、端午節会は、古代から平安時代にかけての日本の社会や文化を反映した、重要な宮中行事であったと言えるでしょう。

脚注

中村義雄「端午」（『国史大辞典 9』吉川弘文館、1988年） ISBN 978-4-642-00509-8
山中裕「端午節会」（『平安時代史事典』角川書店、1994年） ISBN 978-4-040-31700-7

関連項目

* 端午

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