竹林征三

竹林征三

竹林征三（たけばやし せいぞう、1943年 - 2021年4月17日）は、日本の著名な工学者であり、土木工学、特に水資源工学の分野で多大な貢献をしました。彼は、ダム研究の専門家として、自然と文化が調和した持続可能な社会を目指す「風土工学理論」を構築したことで知られています。また、東日本大震災の経験を踏まえ、「環境防災学理論」を体系化し、災害に強い社会づくりにも貢献しました。富士常葉大学名誉教授。

略歴

1967年、京都大学土木工学科を卒業後、1969年に同大学院修士課程を修了し、建設省に入省しました。建設省では、琵琶湖工事事務所長や甲府工事事務所長などを歴任し、その後、土木研究所でダム部長、環境部長、地質官を歴任しました。

建設省退官後、「風土文化と調和する誇りうる地域づくりの方法論」として、文理融合による独創的な風土工学理論を構築し、京都大学より工学博士号を授与されました。風土工学の構築においては、科学技術庁長官賞や前田工学賞を受賞するなど、高い評価を得ています。

1997年には、財団法人土木研究センター風土工学研究所長に就任。2000年の富士常葉大学設立とともに、同大学環境防災学部教授、および同大学附属の風土工学研究所所長に就任し、風土工学の学理のさらなる研磨と発展に尽力しました。また、全国各地で講演活動を行い、風土工学の普及・啓発に努めました。

2007年からは富士常葉大学大学院環境防災研究科教授、2010年には同大学名誉教授に就任。同年には山口大学大学院理工学研究科講師も務めました。2011年には風土工学デザイン研究所理事長、環境防災研究所所長に就任。2012年から2013年にかけては、山口大学時間学研究所客員教授を務めました。2018年には風土工学デザイン研究所会長に就任。

2021年4月17日、逝去されました。

活動

竹林征三は、風土工学の普及啓発活動に力を入れ、全国各地の風土調査を通じて、地域固有の文化や自然環境を尊重した地域づくりを提唱しました。また、環境防災学の視点から、「風土に刻まれた災害の宿命」といったテーマで講演を行い、災害に対する意識向上にも貢献しました。

主張

竹林征三は、「環境防災学」と「風土工学」を両輪とする実践的な学問の重要性を訴えました。彼は、「環境」と「防災」は密接不可分な関係にあり、互いに補完し合うことで健全な体系になると考えました。災害は最大の環境破壊であり、災害を減らす防災は環境保全の重要な根幹をなすと主張しました。そのため、防災を考える際には、望ましい環境形成や風土形成に貢献するという視点が不可欠であると説きました。また、従来の土木工学のあり方を反省し、本来の土木、すなわち風土工学と環境防災学への回帰を提唱しました。

著編書

竹林征三は、多数の著書や編著を通じて、その思想と研究成果を広く社会に発信しました。

単著

『「甲斐路と富士川」―川をまもり・道を拓く―』
『ダムのはなし』
『湖水の文化史』シリーズ（全5巻）
『風土工学序説』
『風土工学事始』
『東洋の智慧の環境学-環境と風土を考える新しい視点』
『湖国の水のみち』
『続・ダムのはなし』
『風土工学の視座』
『県の輪郭は風土を語る-かたちと名前の四七話』
『ダムは本当に不要なのか-国家百年の計から見た真実』
『環境防災学-文理シナジーの実学』
『ダムと堤防-治水・現場からの検証』
『風土千年復興論』
『風土工学への道』
『風潮に見る風土』
『風土工学誕生物語』
『物語日本の治水史』
『環境五訓・風土五訓物語』

編著

『建設環境 技術士を目指して』
『実務者のための「建設環境技術」』
『自然になじむ山岳道路 ダム付替道路を事例として―』
『最新地盤注入工法技術総覧 第2編 岩盤注入工法』
『鋼製ゲート百選』
『風土工学への招待』
『風土と地域づくり-風土を見つめる感性を育む』
『水門工学』
『市民環境工学 第3巻 風土工学』
『建設環境-技術士を目指して』
『技術士への道 専門科目』

(他、共著、共著（編纂）、執筆分担、巻頭・序文多数)

受賞歴

竹林征三は、長年にわたる研究活動と社会貢献が認められ、数々の賞を受賞しました。

建設大臣研究業績表彰
ダム工学会論文賞
科学技術庁長官賞
前田工学賞
埼玉県秩父市のループ橋の愛称名公募で最優秀賞
北上市教育委員会創作民話最優秀賞
土木学会景観デザイン委員会デザイン賞優秀賞
ダム工学会技術開発賞
国土交通大臣建設功労者表彰
日本感性工学会賞出版賞
ダム工学会著作賞
日本橋カルタ公募ルネッサンス特別賞
日本感性工学会出版著作賞アイデア賞
ダム工学会出版賞
『山陰ジオパークかるた』入選
富士学会功労者表彰
国土交通省近畿地方整備局大和川河川事務所『優良業務表彰・優良技術者表彰』
瑞宝小綬章
ダム工学会功績者表彰
日本水大賞

論文・研究報告

竹林征三は、多数の論文や研究報告を発表し、学術界に貢献しました。

学位論文『風土資産を活かしたダム・堰及び水源地のデザイン計画に関する研究』
研究活動報告『風土工学だより』
学会活動報告『風土工学研究』
月刊誌『ダム日本』での連載

役職

竹林征三は、多くの学会や委員会の役職を歴任し、業界の発展に貢献しました。

土木学会 岩盤力学委員会 委員
日本感性工学会理事・風土工学研究部会長
富士学会名誉顧問・元副会長
富士市都市計画審議会 会長
静岡県事業認定審議会 会長
国際日本文化研究センター 共同研究員
日本ダム協会 ダムマイスター
アイヌ地名研究会 顧問
矢作ダム水源地域ビジョン委員会 委員長
風土工学デザイン研究所 理事長・環境防災研究 所長

竹林征三の業績は、土木工学、特に水資源工学の分野において、文化的、環境的な視点を取り入れた先駆的なものであり、今後の社会基盤整備に大きな影響を与え続けるでしょう。

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