竹河

源氏物語「竹河」：玉鬘と娘たちの運命、そして薫の恋

あらすじ

「竹河」は、『源氏物語』五十四帖の一つで、匂宮三帖の最終巻です。物語は、主人公・玉鬘の苦悩と、彼女を取り巻く人々の運命を描いています。夫である髭黒大納言を失った玉鬘は、幼い子供たちを養いながら、衰えた家名を立て直そうと奮闘します。彼女の娘たちは、帝や冷泉院といった有力者から求婚されますが、玉鬘は、複雑な宮廷事情を考慮し、適切な決断に苦悩します。

物語の中心となるのは、玉鬘の娘たちの婚儀と、それをめぐる様々な人間模様です。特に、長女である大君には、薫や蔵人少将といった若者たちが思いを寄せており、彼らの恋の行方も物語を彩る重要な要素となっています。

薫は、玉鬘邸で行われた催馬楽の席で、玉鬘の亡夫や亡弟を彷彿とさせる和琴の音色に心を奪われます。この出会いが、二人の関係に大きな影響を与えます。また、蔵人少将も、大君への想いを募らせ、その恋の苦悩が描かれています。

玉鬘は、長女・大君の将来を案じ、冷泉院への入内を決意します。しかし、この決断は、様々な人物の運命を大きく変えることになります。大君は冷泉院の寵愛を受けますが、その一方で、他の求婚者や宮廷内の勢力図に変化をもたらします。次女の中君は、今上帝に入内し、それぞれ異なる道を歩むことになります。

物語の後半では、薫や蔵人少将は順調に出世し、社会的な地位を高めていきます。しかし、玉鬘は、娘たちの幸せを願いつつも、自身の立場や、思い通りにならない世の中の流れに苦悩します。

官位と矛盾：後記説・別作者説

「竹河」には、いくつかの理由から、後記説や別作者説が唱えられています。例えば、薫や紅梅、夕霧といった主要人物の官位が、巻末において前巻と矛盾している点です。また、冒頭の記述において、語り手が「かつて髭黒や玉鬘に仕えていた女房」であることを明言していることも、この説を支持する根拠の一つとして挙げられています。

ただし、これらの矛盾は、物語の構想上の問題として説明できる、とする反論も存在します。

結論

「竹河」は、王朝社会における女性たちの生き様、権力闘争、そして複雑な人間関係を繊細に描き出した傑作です。玉鬘の苦悩、娘たちの運命、そして若者たちの恋物語は、読者に深い感動を与え、現代においてもなお色褪せない魅力を放っています。様々な解釈が可能な点も、この物語の奥深さを象徴していると言えるでしょう。


参考文献

『国文学解釈と鑑賞 別冊　源氏物語の鑑賞と基礎知識 38 匂兵部卿・紅梅・竹河』（至文堂、2004年12月10日）

関連サイト

渋谷栄一による定家本の本文・現代語訳
* 『源氏物語　46 竹河』：新字新仮名 - 青空文庫（与謝野晶子訳）

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