竹駒神社

竹駒神社：歴史と信仰が交差する東北の霊場

宮城県岩沼市の中心部に位置する竹駒神社は、古くから人々の信仰を集めてきた由緒ある神社です。別名「竹駒稲荷」とも呼ばれ、県社を経て現在は神社本庁の別表神社となっています。日本三大稲荷の一つとして数えられることもあり、特に正月三が日には、鹽竈神社と並ぶほどの多くの初詣客が訪れることで知られています。

神々への崇敬：衣食住を司る神々

主祭神は倉稲魂神（稲荷神）で、相殿には保食神と稚産霊神が祀られています。この三柱の神々は、衣食住といった人間生活の基礎を支える神々として、古来より人々の崇敬を集めてきました。三柱の神々を総称して「竹駒稲荷大神」と呼び、広く信仰されています。

交通の要衝に鎮座：歴史とロケーション

竹駒神社は、仙台平野の阿武隈川左岸に位置しています。この地は、古代の東山道と東海道が初めて合流する地点であり、太平洋岸ルートと内陸ルートという二つの主要な交通路が交わる要衝でした。そのため、畿内政府や奥州藤原氏、伊達氏など、歴代の支配者からも重視され、政治・経済の中心地として栄えてきました。この地理的条件が、神社の繁栄に大きく貢献したと言えるでしょう。

歴史の軌跡：創建から現代まで

社伝によれば、竹駒神社は承和9年（842年）、小野篁が伏見稲荷を勧請して創建したと伝えられています。その後、平安時代には能因が当地を訪れ、神霊の示現を機に竹駒寺が建立されました。戦国時代には衰微しましたが、伊達家の庇護を受けて再び発展し、文化4年（1807年）には正一位の神階を受けました。

明治時代の神仏分離令によって、竹駒寺は移転し、神社は稲荷神を主祭神とするようになりました。明治7年（1874年）には県社に列格し、近代以降も地域の信仰の中心として存在感を示してきました。しかし、平成2年（1990年）には放火によって社殿が焼失する悲しい出来事がありました。その後、平成6年（1994年）に再建され、現在に至っています。

「竹駒」という名前は、岩沼市の旧称である「武隈」の転訛であり、阿武隈川に由来すると考えられています。この地には古くから武隈館と呼ばれる館が存在し、藤原元良や源満仲など、歴代の陸奥守が居住していたことが史料にも記されています。小野篁による創建と、この地の歴史的背景は深く関わっていると言えるでしょう。

境内：歴史的建造物と豊かな自然

竹駒神社の境内には、多くの見どころがあります。文化9年（1812年）建立の随神門は、随神像と神狐像が安置され、岩沼市有形文化財に指定されています。向唐門は天保13年（1842年）建立の総欅造りで、宮城県指定有形文化財にも指定されています。

社殿は拝殿、幣殿、本殿から成り、荘厳な雰囲気を醸し出しています。境内社として、北野神社、秋葉神社、出雲神社、総社宮、八幡神社、愛宕神社などが鎮座し、それぞれに由緒と歴史があります。特に出雲神社は、出雲大社の本殿を模した大社造りの社殿が特徴的です。

拝殿の地下には、放火事件で焼失する前の元宮跡地への通路があり、その北側には命婦社と竹駒神社奥宮が鎮座しています。境内南側には御神田があり、宇賀神社が祀られています。その他、授与所、参集殿、馬事資料館、弓道場などの施設も整備されています。

近年では、参拝者休憩所を改装した「たけこま市場」が開業し、ラーメン店や地場産品販売店が入居しています。地元住民の活動も活発で、神社は地域社会の中核として、今後も発展していくことが期待されます。

もう一度検索