仙台平野

仙台平野：東北地方最大の平野の多様な顔

仙台平野は、宮城県の中央部を占める広大な平野です。東は仙台湾に面し、南は阿武隈高地、西は奥羽山脈、北東部は北上山地に囲まれた、東北地方で最も面積の広い平野として知られています。その広大な面積は、古くから人々の生活を支え、歴史と文化を育んできました。

仙北平野：北上川と鳴瀬川が育む大地

松島丘陵を境に北側に位置する仙北平野は、北上川と鳴瀬川という二大河川の流域に広がっています。洪積台地と沖積低地から成り、かつては多くの湿地帯や湖沼が存在していました。近世から近代にかけての干拓事業によって水田地帯へと姿を変え、現在では広大な水田風景が広がっています。伊豆沼や蕪栗沼など、一部には湖沼の姿を残す地域もあります。

仙北平野は、北上川本流や迫川周辺の平野部と、江合川・鳴瀬川流域の大崎地方に大きく分けられます。大崎市周辺の平野部は特に大崎平野と呼ばれ、その最奥部には王城寺原が広がり、陸上自衛隊王城寺原演習場も所在しています。大崎平野は、宮城県古川農業試験場が位置し、ササニシキやひとめぼれといったブランド米の開発に貢献した地域でもあります。また、独特の地形と風を利用した気球競技も盛んです。

なお、秋田県にも仙北郡（現在の仙北市、大仙市）があり、その平野部も仙北平野と呼ばれることがあるため、混乱を避けるために宮城県の平野を指す際には「仙北平野」の呼称を用いない場合もあります。

仙南平野：歴史と自然が織りなす海岸平野

仙台市周辺から南に広がる仙南平野は、海岸平野と西部の小盆地群から構成されています。海岸平野のみを指して狭義の仙台平野と呼ぶこともあります。阿武隈川以北の地域は名取平野とも呼ばれています。

仙南平野は古くから人々の生活の場であり、奈良時代には多賀城が置かれ、蝦夷との戦いの拠点となりました。阿武隈川と名取川が流れ、これらの河川による堆積作用によって自然堤防が発達しています。

福島県浜通りと地形的にも連続性があり、気候も類似しています。夏季は南東風（イナサ）による霧が発生しやすく、北東風（やませ）の影響で冷夏となることもあります。冬季は北西風（ナライ）による雪雲が奥羽山脈と陸前丘陵によって遮られるため、晴天の日が多いのが特徴です。特に亘理平野は角田丘陵（亘理丘陵）によってさらに雪雲が遮断されるため、晴天率が高く、温暖な気候を生かしてイチゴなどの促成栽培が盛んです。

仙南平野の農地は、長年にわたる国の農政の影響から開発規制がかけられており、広大な稲作地帯として維持されています。この開発規制のため、平野部への住宅地の造成は制限され、仙台都市圏の住宅地は丘陵地に多く建設されています。

しかし、仙南平野は歴史的に日本海溝を震源とする巨大地震による津波の被害を受けやすい地域でもあります。貞観地震（869年）、慶長三陸地震（1611年）、そして東日本大震災（2011年）など、数百年おきに大津波が襲来し、甚大な被害をもたらしてきました。東日本大震災では、海岸線から数キロメートル内陸まで津波が浸入し、多くの犠牲者が出ました。また、震災による地盤沈下も深刻な問題となっており、海抜0メートル地帯の面積が大幅に拡大しました。

仙台平野は、自然の恵みと災害の脅威が共存する複雑な地域です。その歴史と自然環境を理解することは、将来にわたってこの地域に住む人々にとって重要な課題です。

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