笄町

笄町の歴史と概要

笄町（こうがいちょう）は、東京都港区にかつて存在した町名であり、1869年から1967年までの約100年間、その名称が使用されていました。この地区には、現在の港区南青山六丁目から七丁目、西麻布二丁目から四丁目の一部が含まれています。

笄町の成立と町域

この町名は、大政奉還の翌年である1869年に、渋谷長谷寺門前や麻布裏三軒家町など複数の地域を併せて「麻布笄町」として設立されたのが始まりです。1872年には近隣の武家地との合併も行われました。町の範囲は、西麻布交差点（霞町交差点）から広尾方面に向かう外苑西通りの両側に広がり、青山霊園のすぐ南側から日本赤十字社医療センターまで頭を持つロケーションに位置していました。

この地域は、外苑西通りや旧笄川の流れがある低地と、牛坂や笄坂などの高台に囲まれた設計となっており、江戸時代から武家地として利用されてきました。現在、このエリアには様々な商業施設や飲食店が立ち並ぶ一方で、高台には邸宅やマンションも見られ、居住地としての側面も強い地域です。

町名の由来と笄橋

笄町という名称の由来は、地区を流れる笄川に架かっていた笄橋にあります。「笄」という言葉は、伝統的な日本髪のスタイルに使われていたヘアアクセサリーを指し、特に武士は身だしなみの一部として鞘に笄を携えていたとされています。伝説によると、平安時代に源経基という武士が関所を通過する際に笄を役人に渡し、そこから橋が「笄橋」と呼ばれるようになったとされます。残念ながら、この橋は現存しておらず、休日にはその跡を訪ねることもできません。

笄坂とその周辺

笄坂は、笄町の坂道であり、現在の住所では港区西麻布二丁目から四丁目にかけて存在します。この坂はかつて都電が走っていた道で、現在は首都高速道路とオーバーパスする形で高架道路が覆っています。笄坂は牛坂と並行しており、西麻布交差点を挟んで霞坂対面にも存在しています。この坂道は、青山六丁目から笄町電車通りを通じて主要な交通ルートとして利用されていました。

大猫伝説と地域の文化

笄町には「麻布の大猫」として知られる伝説があり、地域にユニークな文化が根付いています。そのストーリーは、昔々、特別な猫がこの地区で育まれたことに関するもので、現在もこの伝説は地域の歴史の一部として語り継がれています。

著名な出身者

笄町はまた、多くの著名な人物を輩出しています。俳優の赤木圭一郎や建築家のアントニン・レーモンド、また内田祥三や古河虎之助など、各界で活躍した人々がこの地にゆかりを持っています。特に内田祥三は、東京帝国大学の総長であり、麻布笄町に居住していたことでも知られています。加えて、著名作者や実業家、音楽評論家もこの地に根付いており、その多様性は地域の魅力となっています。

まとめ

笄町は、歴史的な背景と共に多様な文化を持つ場所でした。町名の消滅から半世紀近くが経ちますが、笄町の名残は今なお様々な形で地域の中に息づいているのです。江戸時代から続くこの地区のストーリーは、今もなお多くの人々によって語り継がれています。

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