第一次ケルティベリア戦争

第一次ケルティベリア戦争

第一次ケルティベリア戦争は、紀元前181年から紀元前179年にかけて、ルソネス人を中心とするケルティベリア人と共和政ローマの間で繰り広げられた戦いです。この戦争は、ケルティベリア人がローマの支配に抵抗した初期の重要な事例であり、その後のローマによるヒスパニア征服の過程において重要な意味を持ちます。

戦争の背景

第二次ポエニ戦争の結果、ローマはヒスパニアをカルタゴから奪い、その支配を確立しました。しかし、ローマの支配はヒスパニア全土に及んでいたわけではなく、特に内陸部のケルティベリア人に対しては、間接的な影響力を持つに留まっていました。

ケルティベリア人は、ケルト人とイベリア人が融合して生まれた民族であり、エブロ川流域に居住していました。彼らは、ローマに対して表面的には従順な態度を示しつつも、内心では独立を維持しようとしていました。ルソネス人は、ケルティベリア人の一部族であり、農業や鉱業を営んでいました。

アッピアノスによれば、戦争の発端は、ルソネス人を中心とするケルティベリア人が、土地不足を理由にローマに対して反乱を起こしたことでした。しかし、当時のケルティベリア人は、ローマと友好的な関係を築いていたわけではなく、単に服属していなかっただけという見方もできます。

戦争の経過

紀元前181年、ケルティベリア人の反乱が発生すると、執政官フルウィウス・フラックスは、反乱軍を攻撃して打ち破りました。敗れたケルティベリア人たちは、コンプレガという町に立て籠もり、要塞化しました。彼らはフラックスに対し、戦死者一人につき、服、馬、剣をそれぞれ一着、一匹、一振りずつ賠償するよう要求しました。フラックスは要求に応じる姿勢を見せつつ、兵力を率いてコンプレガに接近し、攻撃の構えを見せました。これに対し、コンプレガのケルティベリア人は戦わずに逃走しました。

紀元前179年、ティベリウス・センプロニウス・グラックス・マイヨル（大グラックス）がヒスパニアに着任すると、ケルティベリア人は、ローマと同盟関係にあったカラウィスという町を包囲しました。グラックスは急行してカラウィスの包囲を解きました。

ほぼ同時期、コンプレガの住民2万人が、オリーブの枝を手に、会談を求める姿勢でグラックス軍に接近しました。しかし、彼らは突然攻撃を仕掛け、グラックス軍を混乱に陥れました。グラックスは一旦陣営を放棄して退却し、ケルティベリア人が陣営を略奪している隙を突いて反撃し、これを撃破しました。この勝利の後、グラックスはコンプレガを征服しました。

戦後処理

グラックスは、コンプレガの土地をローマの貧民に分配し、周辺の諸部族と友好条約を結んでからローマに帰還しました。この条約によって、ケルティベリア人はローマに対して貢納と戦時の兵力供出を義務付けられましたが、後にこの義務は免除されました。これ以降、ルソネス人はローマに逆らうことなく、ヌマンティア戦争などでもローマ側について戦いました。

第一次ケルティベリア戦争は、ローマがヒスパニアを支配する上で重要な転換点となりました。この戦争を通じて、ローマはケルティベリア人の抵抗を抑え込み、その後のヒスパニア征服を円滑に進めることができました。また、この戦争は、ローマの軍事力と外交手腕を示す事例として、後世に語り継がれています。

参考文献
* アッピアノス『ローマ史』「イベリカ」

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