第一次マイソール戦争

第一次マイソール戦争

第一次マイソール戦争（1767年-1769年）は、南インドでイギリス東インド会社とマイソール王国の間で行われた武力衝突でした。この戦争は、イギリスの植民地拡張の試みと、マイソールの指導者ハイダル・アリーの台頭が交錯する中で勃発しました。

背景

マイソール王国は南インドに位置し、長い間、豊かな商業活動を享受していました。1761年の夏以降、この地域ではムスリムの将軍ハイダル・アリーが権力を掌握しており、従来のヒンドゥー系支配者オデヤ朝は形だけの存在となっていました。一方、イギリス東インド会社は、1757年のプラッシーの戦い以降、急速に権力を広げ、1764年にはムガル帝国を相手に勝利を収め、1765年にはディーワーニーを取得することに成功しました。これにより、彼らの南インド征服への道が開かれることとなりました。

ハイダル・アリーは、彼にとっての脅威であるイギリスと協調している近隣王国に不満を抱いていました。特に、マラーター王国やニザーム王国がイギリスと連携している状況には強い警戒心を抱いていました。このような複雑な国際情勢が、南インドでの緊張を高めていました。

戦争の開始

1766年11月、マラーター王国の宰相マーダヴ・ラーオがマイソールに対して侵攻を開始し、1767年1月にはマイソール領土に侵入しました。この行動が第一次マイソール戦争の開戦を示唆しているとされます。マイソール王国はハイダル・アリーの指導の下、ニザーム王国と同盟を結び、この同盟は既存のイギリスとの友好条約を破棄する形となりました。8月にはハイダル・アリーがカルナータカ地方に侵攻し、イギリスの拠点マドラスを目指しました。

戦争の進展

戦争が始まると、ハイダル・アリーはその強固な軍事戦略でイギリス軍に大打撃を与えました。特に1767年9月21日のティルヴァンナーマライの戦いでは、イギリス側を破り、モンスーンの中でその勢いを保ちました。また、11月にはアンブールを包囲攻撃し、城塞の守備隊を苦しめました。

一方で、ボンベイのイギリス東インド会社はハイダル・アリーの領土を攻撃しようと試みましたが、1768年2月にマンガロールが占領されると、戦況は不利に進展しました。その結果、ニザーム王国は戦線を離脱し、新たな友好条約を結ぶことを余儀なくされました。

しかし、ハイダル・アリーの息子ティプー・スルターンは、父の支援を受けてマンガロールを取り戻すことに成功しました。彼はまた、イギリスにしか味方しないナイルと呼ばれる地域の住民に対して追徴税を課しました。こうした動きの中で、ハイダル・アリーは敵との交渉を試みましたが、失敗に終わりました。

1769年3月末には、ハイダル・アリーがマドラスを包囲し、イギリスはこの状況に対処するための講和交渉を開始しました。4月3日には、双方の占領地および捕虜の返還を定めたマドラス条約が結ばれ、戦争は終息しました。_この戦争は、南インドにおけるイギリスの影響力を強める一因となり、後のマイソール戦争へとつながっていくことになります。_

参考文献

• - 辛島昇『世界歴史大系 南アジア史3―南インド―』山川出版社、2007年。
• - Bowring, Lewin (1899). Haidar Alí and Tipú Sultán, and the Struggle with the Musalmán Powers of the South. Oxford: Clarendon Press.

このように、第一次マイソール戦争は単なる戦争ではなく、イギリスのインド征服への道筋を築く重要な歴史的意義を有しています。

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