第三次イタリア戦争

第三次イタリア戦争（1521年 - 1526年）

第三次イタリア戦争は、しばしば四年戦争とも呼ばれ、16世紀初頭のヨーロッパを舞台に繰り広げられたイタリア戦争の一部です。この戦いは、フランス王フランソワ1世と、彼の同盟国であるヴェネツィア共和国が、神聖ローマ皇帝カール5世、イングランド王ヘンリー8世、そして教皇国家と戦ったもので、最終的にはフランス側の敗北に終わりました。

戦争の背景

この戦争の根底には、ヨーロッパの覇権を巡る大国間の複雑な対立がありました。1519年にカール5世が神聖ローマ皇帝に選出されたことは、フランソワ1世にとって大きな脅威となりました。また、ローマ教皇レオ10世が、宗教改革の創始者であるマルティン・ルターに対抗するためにカール5世と同盟を結んだことも、事態をさらに複雑にしました。

1515年のマリニャーノの戦いはカンブレー同盟戦争を終結させましたが、1518年までにその平和は崩れ始めました。西欧の大国（フランス、イングランド、スペイン、神聖ローマ帝国）は、ロンドン条約で相互不可侵と軍事同盟を約していましたが、神聖ローマ帝国の継承問題では意見が対立していました。皇帝マクシミリアン1世は、孫のカルロス1世（後のカール5世）を後継者に推しましたが、フランソワ1世も自らを推していました。

宗教改革の進展もまた、この戦争に影響を与えました。マルティン・ルターの影響力が拡大する中、教皇と神聖ローマ帝国はこれに対応する必要に迫られていました。イングランドのウルジー枢機卿は、大陸での紛争に介入することでイングランドの影響力を拡大しようとしましたが、これはフランソワ1世にとって障害となりました。

マクシミリアン1世の死後、皇帝選挙がヨーロッパ政治の焦点となりました。教皇レオ10世は当初フランソワ1世を支持しましたが、カール5世の選出を阻止できないと悟ると、カール5世支持に転じました。選帝侯たちは、賄賂によってどちらの陣営にも傾いていましたが、最終的にはカール5世が兵をフランクフルト近郊に派遣したことで、カール5世が皇帝に選出されました。

戦争の勃発と初期の戦闘

1521年、フランス軍がナバラ王国とネーデルラントに侵攻したことで、戦争が勃発しました。フランス軍はピレネー山脈を越えてスペインに侵攻しましたが、スペイン軍に撃退され、神聖ローマ帝国軍はフランス北部に侵攻しましたが、そこで足止めされました。

教皇、皇帝、ヘンリー8世は対フランス同盟を結成し、イタリア半島での戦いを再開させました。しかし、フランソワ1世とカール5世は主戦場をフランス北東部とみなし、イタリアでの戦いは重要視されませんでした。1522年4月27日のビコッカの戦いで、皇帝軍と教皇軍がフランス軍に勝利したことで、フランスはロンバルディアから追い出されました。ヴェネツィアは単独講和し、イングランドは1523年にフランスを攻撃しました。同年、ブルボン公シャルル3世がフランソワ1世を裏切り、皇帝と同盟しました。

1524年、フランスはロンバルディアを再侵攻しましたが失敗し、ブルボン公はスペイン軍を率いてプロヴァンスに侵攻しました。

パヴィアの戦いと戦争の終結

フランソワ1世は親征を決行し、1525年にミラノを攻撃しましたが、パヴィアの戦いで大敗し捕虜となりました。これにより戦争は終結を迎え、フランスは講和を模索せざるを得なくなりました。

捕虜となったフランソワ1世の母ルイーズ・ド・サヴォワが外交を主導し、オスマン帝国のスレイマン1世に神聖ローマ帝国への最後通牒を出させました。これは、後のフランス・オスマン同盟の基礎となりました。しかし、外交努力や背後からの攻撃にもかかわらず、フランソワ1世はマドリード条約に署名せざるを得なくなり、イタリア、フランドル、ブルゴーニュ公国を放棄しました。

しかし、解放されたフランソワ1世は条約の履行を拒否して戦争を再開しました。マドリード条約以降の戦いはコニャック同盟戦争と呼ばれます。イタリア戦争はこの後30年続くことになりますが、フランスのイタリア占領の野望は最終的に潰えることになります。

各国の思惑と外交

この戦争には、各国の複雑な思惑が絡み合っていました。イングランドのウルジー枢機卿は、大陸での紛争に介入することでイングランドの影響力を拡大しようとしました。ヴェネツィアは、以前の戦争の経験から、中立的な立場を維持しようとしました。

フランスは、オスマン帝国との同盟を通じてハプスブルク家に対抗しようとしましたが、最終的にはその目標を達成できませんでした。神聖ローマ帝国と教皇国家は、宗教改革に対応するため、そしてハプスブルク家の覇権を確立するために同盟を結びました。

戦争の教訓と影響

第三次イタリア戦争は、ヨーロッパの政治地図を大きく変えることはありませんでしたが、その後の国際関係に大きな影響を与えました。この戦争は、大国間の複雑な対立、宗教改革の影響、そして外交の重要性を示しました。また、パヴィアの戦いでのフランス軍の敗北は、火縄銃の優位性を再認識させ、軍事戦術に大きな変化をもたらしました。

この戦争は、ヨーロッパの覇権を巡る戦いが続くことを示唆しており、後のコニャック同盟戦争、そしてその後のイタリア戦争へと繋がっていきます。

参考資料

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