第九軍団のワシ

第九軍団のワシ

ローズマリー・サトクリフによって1954年に発表された『第九軍団のワシ』は、古代ローマを舞台にした歴史冒険小説であり、作者の代表作の一つとして知られています。物語は、ハドリアヌスの長城が築かれた後の2世紀のブリタンニアを舞台に展開されます。

この作品は、サトクリフが描く一連のローマ帝国とブリテンを舞台とした作品群の最初の作品でもあります。これらの作品は、エメラルドのイルカの紋章を受け継ぐ家族の物語として、『銀の枝』、『辺境のオオカミ』、『ともしびをかかげて』、『落日の剣 真実のアーサー王の物語』、『夜明けの風』、『剣の歌 ヴァイキングの物語』、『シールド・リング ヴァイキングの心の砦』へと続いていきます。

あらすじ

物語の中心となるのは、ブリトン人との戦いで負傷し、退役を余儀なくされたローマ軍人のマーカス・フラヴィアス・アクイラです。彼は、奴隷として共に暮らすスコットランド人のエスカとともに、かつて彼の父が指揮を執り、ブリテン北部で行方不明となった第9軍団ヒスパナの謎を解き明かすための旅に出ます。

マーカスとエスカは、危険な北方へと足を踏み入れ、様々な困難に立ち向かいながら、第9軍団の足跡を追います。彼らは、軍団が消息を絶った真相に近づくにつれて、ブリテンの地におけるローマの支配と、そこに生きる人々の複雑な関係を目の当たりにするのです。

着想

作者であるサトクリフは、物語の着想について、史料に残る117年の第9軍団ヒスパナの失踪事件と、1866年にシルチェスター近郊で発見された翼のないワシの銅像から得たと語っています。この銅像は、物語に登場する軍団の象徴であるワシを想起させ、物語に深みを与えています。レディング博物館は、この銅像について「軍団のワシではないが、ローズマリー・サトクリフによってそのような名声を得た」とコメントしています。

翻案

『第九軍団のワシ』は、その魅力的な物語から、様々なメディアで翻案されています。1977年にはBBCによってテレビドラマ化され、1996年にはオーディオブックが制作されました。

さらに、2011年にはケヴィン・マクドナルド監督によって映画化され、『The Eagle』というタイトルで公開されました。映画では、チャニング・テイタムがマーカスを、ジェイミー・ベルがエスカを演じ、原作の持つ冒険と友情の物語を映像として再現しています。

『第九軍団のワシ』は、古代ローマを舞台にした歴史小説として、長年にわたり多くの読者に愛され続けています。失われた軍団の謎、主人公たちの成長、そして異文化間の交流を描いたこの作品は、時代を超えて人々の心を捉える魅力を持っています。

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