第二ロンドン信仰告白

概要と歴史的背景

第二ロンドン信仰告白は、1689年のバプテスト信仰告白（The Baptist confession of faith of 1689）としても広く知られ、17世紀後半のイングランドにおいて、カルヴァン主義の立場をとるバプテスト教会（特にパティキュラー・バプテストと呼ばれたグループ）の代表者たちによって作成され、後に正式に採択された歴史的な信条文書です。その草案は1677年に作成されました。

この信仰告白が生まれた背景には、当時のイングランドにおける緊迫した宗教情勢があります。イングランド国教会が国家の教会として優位を占め、それ以外の教派、すなわち非国教会派（ディセンターズ）への強い圧力が存在していました。長老派、会衆派、そしてバプテスト派といったこれらの非国教会派は、国教会からの迫害や法的・社会的な抑圧に直面していたのです。このような困難な時代にあって、各教派は自らの信仰の立場を明確にし、内部の結束を強め、また他の教派との信仰的な共通点を示す目的で、様々な信仰告白を作成しました。

第二ロンドン信仰告白の作成にあたっては、同時期に長老派によって作成され、既に高い権威を持っていたウェストミンスター信仰告白が主要な範型とされました。迫害を避けるために、当初このバプテスト信仰告白は匿名で発表されたと考えられています。これは、広範な改革派の伝統における信仰の基本的な一致点を強調しつつ、バプテスト派固有の立場を表明するという二重の意図があったためと推測されます。実際、その構成や内容の多くの部分は、ウェストミンスター信仰告白や、会衆派のサヴォイ信仰宣言と共通しており、これらはしばしば「公同の産物」とも称されます。

内容と特徴

第二ロンドン信仰告白の顕著な特徴は、そのテキストの大部分がウェストミンスター信仰告白の内容をほぼそのまま引き継いでいる点にあります。神論、聖書論、人間論、キリスト論、救済論など、改革派神学の主要な教理に関する記述は、ウェストミンスター信仰告白と非常に似通っています。これは、当時のカルヴァン主義バプテストが、ルター派やアルミニウス主義とは異なる、広範な改革派プロテスタントの伝統の中に自らの神学的な根拠をしっかりと位置づけていたことを示しています。

しかし、バプテスト教会固有の信仰理解に基づいた、いくつかの重要な相違点が存在します。最も決定的な違いは、洗礼（礼典論）と教会の構成原理（教会論）に関する記述に見られます。バプテスト教会は、キリストへの信仰を自ら告白した者だけが、聖書に基づいた適切な洗礼（浸礼）を受けるべきであると考えます。したがって、信仰告白をしない幼児への洗礼を認めません。第二ロンドン信仰告白は、この「信者のバプテスマ」のみを正当とする立場と、それに基づき教会が信仰を告白し洗礼を受けた者のみで構成されるべきであるという教会論を明確に打ち出しています。これらの点は、幼児洗礼を実践する長老派のウェストミンスター信仰告白や会衆派のサヴォイ信仰宣言との明確な区別を形成しています。

採択とその後の影響

1689年、イングランドでは寛容法が制定され、非国教会派に対する法的な圧力が緩和され、一定の範囲で信仰の自由が保障されるようになりました。この歴史的な転換期を迎えて、イングランドとウェールズ各地から集まった107ものバプテスト教会の代表者たちがロンドンに会合を持ちました。彼らは、1677年に作成されていたこの信仰告白の文書を検討し、ほぼ修正を加えることなく、カルヴァン主義バプテスト教会の公式な信仰告白として満場一致で採択することを決定しました。この正式な採択をもって、この文書は「第二ロンドン信仰告白」あるいは単に「1689年バプテスト信仰告白」として広く認識されるようになったのです。

この採択以降、第二ロンドン信仰告白は、特にイングランドおよびその後の英連邦（ Commonwealth of Nations ）におけるカルヴァン主義バプテスト教会の最も基本的かつ権威ある信条文書としての地位を確立しました。これは、改革派神学の確固たる枠組みの中で、バプテスト派独自の礼典論と教会論を明確に表明した文書として、その後の教会の教理的な基盤を築く上で極めて重要な役割を果たしました。

さらに、この信仰告白の影響は海を越え、北米大陸にも及びました。1742年には、当時アメリカ植民地で活動していたバプテスト教会が集まったフィラデルフィア地方連合によって、この信仰告白が若干の改訂を経て「フィラデルフィア信仰告白」として採用されました。これは、北米におけるカルヴァン主義バプテスト教会の形成と拡大に大きな影響を与えることになります。今日でも、世界の多くの改革派バプテスト教会や信仰共同体において、第二ロンドン信仰告白は基本的な教理基準として尊重され、聖書に基づいた信仰理解のための重要な指針として用いられ続けています。

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