第二次フィッシャー砦の戦い

第二次フィッシャー砦の戦い：南北戦争終結への転換点

第二次フィッシャー砦の戦いは、南北戦争末期、1865年1月にノースカロライナ州ウィルミントン郊外で繰り広げられた、北軍による南軍の要塞フィッシャー砦への攻撃です。この砦は「南部のジブラルタル」とも称され、南軍にとって最後の主要な海岸拠点であり、その戦略的な価値は非常に大きいものでした。

背景：南軍の生命線

ウィルミントンは南軍にとって、最後まで開かれていた主要港でした。ここから出港した船は、ケープフェア川を経由してバハマ、バミューダ、ノバスコシアなどへと航海し、綿花やたばこと引き換えにイギリスから必要な物資を調達していました。この貿易ルートを守っていたのがフィッシャー砦でした。

この砦はロシアのセヴァストポリにあるマラコフ・タワーを模倣し、土と砂で築かれており、北軍の艦船からの激しい砲撃を吸収するよう設計されていました。22門の大砲が海を向き、25門が陸地を向いており、特に海に面した大砲は高さ12フィート（約3.6メートル）の砲台に、砦の南端の砲台は高さ45フィート（約13.5メートル）から60フィート（約18メートル）の高さに設置されていました。砦の内部には地下通路と防弾性のある部屋が設けられており、堅牢な要塞でした。

1864年12月には、ベンジャミン・フランクリン・バトラー少将率いる北軍が2日間にわたって攻撃を仕掛けましたが、南軍によって撃退されました（第一次フィッシャー砦の戦い）。しかし、北軍は諦めず、1865年1月に再び攻撃を仕掛けることになります。

戦闘の展開

北軍はアルフレッド・テリー少将の指揮のもと、ジェームズ軍から選抜された9,000名の暫定軍団を率い、デイビッド・D・ポーター海軍少将率いる60隻の艦船とともに再攻撃を開始しました。

南軍はW・H・C・ホワイティング将軍がケープフェア地区軍を指揮し、ブラクストン・ブラッグ将軍に援軍を要請しましたが、ブラッグはウィルミントンを守るために兵力を割くことを躊躇しました。最終的にウィリアム・ラム大佐が守るフィッシャー砦には援軍が送られ、守備兵は1,900名となりました。ロバート・ホーク少将率いる6,400名の師団が砦の北の半島に駐屯していました。ホワイティング自身も砦に赴き、「ラムよ、貴方と運命を共にするために来た。貴方とその守備隊は犠牲になる」と告げました。

テリーは海軍との連携の重要性を理解しており、ポーター提督と綿密な作戦を立てました。チャールズ・J・ペイン准将指揮下の有色人種師団を派遣してホーク師団を牽制し、アデルバート・エイムズ准将師団がジョセフ・C・アボット大佐の独立旅団の支援を得て、陸上から砦を攻撃することとしました。ポーターは2,000名の水兵と海兵からなる上陸部隊を編成し、砦の海側を攻撃することとしました。

1月13日、テリーはホーク軍とフィッシャー砦の間で軍隊を上陸させました。ホークはウィルミントンへの道を空けることを恐れ、北軍が上陸する間、交戦を控えました。翌日、テリーは砦を偵察し、歩兵による攻撃が成功すると判断しました。

1月15日、ポーターの砲艦が砦の海側に対して砲火を開き、正午までにほとんどの大砲を沈黙させました。この砲撃の間に、ホークは砦への援軍を派遣しましたが、一部は引き返さざるを得ませんでした。水兵と海兵の上陸部隊が「パルピット」と呼ばれる地点に進軍しましたが、これは失敗に終わりました。

しかし、この攻撃で南軍の注意が逸れ、エイムズ師団が川側の門から攻撃を開始しました。カーティス旅団が最初に突入し、外側の防御線を突破しましたが、大きな損失を出しました。その後、ペニーパッカー旅団も突入し、エイムズも砦の中まで同行しました。南軍の狙撃兵がエイムズ隊を狙い、多くの副官が倒れました。ペニーパッカー隊が川側の門から突入し、エイムズは一部の兵に砦の中で防御陣地を構築させました。

激しい戦闘の中、ポーターの砲撃が北軍の士気を維持しました。カーティス隊は4番目の防御線も攻略し、ラム大佐は残りの兵を集め、最後の防御線で反撃を試みようとしましたが、重傷を負って倒れ、ホワイティングとともに病院に運ばれました。エイムズは塹壕戦に移るよう指示し、カーティスが興奮して「掘れよおまえ達、おまえ達のためにやってきたぜ」と叫んだ場面も記録されています。戦闘開始から約1時間後、カーティスとペニーパッカーも負傷しました。

暗闇になっても戦闘は続き、海からの砲弾が飛び交う中、エイムズは連隊指揮官や旅団指揮官が戦死または負傷したため、次第に部隊の統制が取れなくなりました。テリーはアボット旅団を支援に送り、砦の中でエイムズと合流しました。一方、フィッシャー砦の病院では、ラムが指揮権をジェイムズ・ライリー少佐に渡し、ホワイティングはブラッグ将軍に最後の援兵要請の伝令を送りました。しかし、ブラッグはフィッシャー砦が落ちていないと信じ、ホワイティングの要求に倦み、アルフレッド・コルキット准将を派遣してホワイティングを解任し、フィッシャー砦の指揮を引き継ぐよう指示しました。コルキットが砦に到着した時には、ラム、ホワイティングおよび負傷した南軍兵はブキャナン砲台まで押し込まれていました。

もはや南軍がフィッシャー砦を守り抜くことは不可能でした。海側の砲台は沈黙し、北側の防壁はほとんど占領され、エイムズは内部の稜堡で防御体制を敷いていました。テリーは夜のうちに戦いを終結させることを決意し、エイムズに攻勢を続けるよう命令し、側面攻撃隊を編成しました。数分で南軍の敗北は決定的となりました。ライリー少佐は白旗を持って北軍の前線に歩み寄り、砦の降伏を告げました。午後10時直前、テリーはホワイティングから砦の公式な降伏を受けました。

戦いの後と影響

フィッシャー砦の喪失は、南軍にとって最後の主要港を失ったことを意味し、南軍の貿易ルートが遮断され、戦争の終結を早める要因となりました。1ヶ月後、ジョン・マカリスター・スコフィールド少将率いる北軍がケープフェア川を遡り、ウィルミントンを占領しました。

戦勝に沸く北軍でしたが、1月16日には砦の火薬庫が爆発し、104名の兵士が死亡するという悲劇も起こりました。

ウィリアム・ラムはこの戦闘で生き残りましたが、その後7ヶ月間は松葉杖が必要でした。ホワイティングは捕虜となり、収容所で死亡しました。ペニーパッカー大佐の傷は致命傷とみなされ、テリーは彼の名誉昇進を保証しました。ペニーパッカーは20歳で正式に准将に昇進し、現在でもアメリカ陸軍でその階級を受けた最年少記録となっています。N・マーティン・カーティスも准将に昇進し、カーティスとペニーパッカーはこの戦闘での功績で名誉勲章を受章しました。

戦力

北軍

暫定軍団：アルフレッド・テリー少将
第24軍団第1師団：ジョセフ・C・アボット大佐
第24軍団第2師団：アデルバート・エイムズ准将
第25軍団第3師団：チャールズ・J・ペイン准将
北大西洋封鎖戦隊：デイビッド・ディクソン・ポーター海軍少将
海軍上陸部隊：キダー・R・ブリーズ戦隊長

南軍

ノースカロライナ方面軍：ブラクストン・ブラッグ将軍
第3地区：W・H・C・ホワイティング少将
ケープフェア河口守備軍：ルイス・ヘバート准将
フィッシャー砦守備隊：ウィリアム・ラム大佐（負傷）、ジェイムズ・ライリー少佐
* ホーク師団：ロバート・F・ホーク少将

第二次フィッシャー砦の戦いは、南北戦争の終結を早める重要な転換点となりました。この戦いでの北軍の勝利は、南軍の生命線であった海上貿易を断ち切り、南軍の弱体化を決定づけることとなりました。

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