第二次ホムスの戦い

第二次ホムスの戦い：モンゴル帝国拡大の転換点

1281年10月29日、シリア西部のホムスにおいて、モンゴル帝国の地方政権であるイルハン朝と、エジプトを拠点とするマムルーク朝による大規模な戦闘、第二次ホムスの戦いが勃発しました。この戦いは、両勢力がシリアの支配権を巡って激しく争った結果として起こりました。

戦いの前兆

[アイン・ジャールートの戦い]とエルビスタンの戦い(1277年)でモンゴル軍を撃破したマムルーク朝でしたが、イルハン朝のアバカはシリアへの野望を捨てていませんでした。アバカは、弟のモンケ・テムルを総司令官に任命し、アルメニア王国とグルジア王国の軍勢を加えた4～5万の大軍をシリアへ派遣しました。このモンゴル軍は、1280年10月20日にアレッポを占領、略奪、破壊を行い、住民はダマスカスへと避難しました。この事態を受けて、マムルーク朝のスルターン、カラーウーンは全軍を挙げてモンゴル軍に対抗する決意をしました。

激しい戦闘

1281年10月29日、ホムスの南方において、両軍は激突しました。モンゴル軍はアルメニアとグルジアの連合軍を先鋒に、マムルーク軍の左翼を攻撃し、これを撃破、壊走させました。しかし、マムルーク軍の中央部隊は頑強な抵抗を見せ、モンゴル軍の中央を突破、壊滅させました。モンケ・テムル自身も負傷し、敗走を余儀なくされました。モンゴル軍は混乱のうちに後退を始めました。しかし、マムルーク軍は追撃をせず、アルメニアとグルジアの連合軍は辛うじて撤退に成功しました。

戦いの余波と歴史的意義

翌1282年、イルハン朝のアバカが死去すると、後継者のテグデルは対マムルーク朝政策を転換、イスラム教に改宗し、マムルーク朝との友好関係を築きました。第二次ホムスの戦いは、西方の国境においてモンゴル軍が完全に撃退された初めての事例となりました。歴史家Nicholas Mortonは、この戦いをモンゴル帝国の拡大における重要な転換点として位置付けています。それまでのモンゴルの圧倒的な軍事力と領土拡大は、この戦いを境に終焉を迎えることとなります。マムルーク朝の勝利は、近東地域における勢力均衡を大きく変え、その後の中世イスラーム世界史に大きな影響を与えました。

参考文献

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Richard, Jean (1999). The Crusades, C. 1071-c. 1291. Cambridge University Press. ISBN 0-521-62566-1
Riley-Smith, Jonathan (2012). The Knights Hospitaller in the Levant, c.1070-1309. Springer. ISBN 9781137264756
Waterson, James (2007). The Knights of Islam: The Wars of the Mamluks*. London: Greenhill Books. ISBN 978-1-85367-734-2

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