第1期本因坊戦

第1期本因坊戦：囲碁界の新たな幕開け

第1期本因坊戦は、1939年から1941年にかけて行われた、本因坊の名跡を選手権制で決定する画期的な棋戦でした。正式名称は「本因坊名跡争奪・全日本専門棋士選手権大手合」、別名「本因坊位継承戦」として、日本棋院によって開催されました。

開催の経緯：実力主義への移行

江戸時代以来、囲碁界の第一人者は本因坊家、安井家、井上家、林家の家元四家から選ばれる名人が担ってきました。しかし、昭和初期には、終身制である名人位に対し、真の実力者が第一人者であるべきという世論が高まっていました。

東京日々新聞の阿部真之助は、囲碁と将棋の名人位を選手権戦で決定することを企画。将棋界では名人戦が成功を収める一方、囲碁界では本因坊秀哉が「本因坊戦」として本因坊家の名跡継承者を決定するという意向を示しました。こうして、本因坊家の名跡を日本棋院に譲渡し、毎日新聞が権利金を支払う形で、1937年から本因坊戦が開始されることになったのです。

その準備段階として、毎日新聞は「全日本囲棋選手権大会」を開催。当初は参加全棋士が互先コミ出し制で対局する予定でしたが、棋士の反対により段位差に基づく手合割での対局となりました。この結果を受け、本因坊戦では低段者の予選を勝ち抜いた者が高段者と互先で対局するという方式が採用されることになりました。

また、本因坊戦開始前には、本因坊秀哉の引退記念対局が行われました。予選は互先コミ出し制で行われ、木谷實が優勝。引退碁は木谷の5目勝で終わりました。この予選中には、加藤信がコミ出し制に反対する意見を表明し、「コミ碁は碁にあらず事件」と呼ばれる騒動も起こりました。

1939年6月、本因坊秀哉と門下一同による選手権についての声明書が発表され、日本棋院で創定式が開催。しかし、予選開始後の1940年1月に本因坊秀哉は他界しました。

方式：実力至上主義を反映したシステム

参加資格はプロ棋士の五段以上（第1期のみ甲組四段も参加）。トーナメントは、甲組四段、五段、六段の各級でトーナメントを行い、勝ち抜き者と七段による最終トーナメントを実施。甲組四段の上位2名が五段級トーナメントに、五段級トーナメントの上位2名が六段級トーナメントに進出します。

六段級トーナメントは2回行われ、小数点優位法による上位4名が最終トーナメントに進出。最終トーナメントは8名で4回行われ、獲得点数の上位2名が初代本因坊を決定する六番勝負に進みます。持ち時間は各11時間（最終トーナメント・決勝六番勝負は各13時間）。コミは4目半、決勝六番勝負はコミ無しで行われました。

決勝六番勝負：初代本因坊の誕生

最終トーナメントを勝ち抜いた関山利一と加藤信による六番勝負は、1941年2月から7月にかけて行われました。結果は3勝3敗となり、規定により予選成績上位の関山利一が初代本因坊に決定し、本因坊利仙の号が贈られました。

1939年9月10日には、日本棋院で第1期本因坊名跡継承式が開催され、多くの関係者が参集しました。以後、本因坊戦は日本棋院の二大行事として定着することとなりました。

もう一度検索