第1次キャメロン内閣

第1次キャメロン内閣：戦後初の連立政権と数々の波乱

2010年5月6日に行われたイギリス総選挙は、どの政党も単独過半数を獲得できない「ハング・パーラメント」という結果に終わりました。このため、得票数で第一党となった保守党と第三党の自由民主党が連立政権を樹立することとなり、デーヴィッド・キャメロンを首相、ニック・クレッグを副首相とする、戦後初の連立内閣が誕生しました。5月11日にキャメロン首相が女王エリザベス2世から任命され、翌12日に閣僚が正式に決定、13日には初めての閣議が開かれました。

連立政権の成立と、その背景

戦後イギリスで連立政権が成立したのは、第二次世界大戦中のチャーチル挙国一致内閣以来のことです。それまでの選挙では、単独過半数を得た政党が少数与党内閣を組み、小政党からの協力を得ながら政権運営を行うケースもありましたが、長期的な連立政権は例外的な出来事でした。今回の連立内閣は、自由民主党から5名の閣僚が参加するという、まさに異例中の異例と言えるでしょう。

影の内閣との違い

通常、イギリスでは政権交代時に、野党が事前に準備していた「影の内閣」のメンバーがそのまま閣僚に就任することが慣例です。しかし、このキャメロン内閣では、自由民主党との連立によっていくつかの閣僚ポストが自由民主党に割り当てられたため、影の内閣と実際の閣僚名簿には違いが生じました。自由民主党側も、影の内閣の予定と実際の人事は完全に一致していませんでした。

経験豊富な閣僚たち、そして日本とのつながり

この内閣には、キャメロン首相とクレッグ副首相に加え、過去に党首を務めたウィリアム・ヘイグとイアン・ダンカン・スミスという、党首経験者4名が参加するという特徴がありました。さらに、イアン・ダンカン・スミスは日本人の血を引くクォーターであり、ジェレミー・ハントは日本で英語教師を務めた経験を持ち、ニック・クレッグの父親は大和日英基金の理事を務めていたというように、日本との繋がりを持つ閣僚が多く参加していました。クレッグの母親はオランダ人で、幼少期にインドネシアで日本軍の抑留を経験したという経歴も持ち合わせていました。

スキャンダルと閣僚の辞任

このキャメロン内閣は、閣僚の不祥事にも悩まされました。2010年5月、デイヴィッド・ローズ財務担当大臣が議員経費を私的に流用していたことが発覚し、辞任に追い込まれました。その後任にはダニー・アレグザンダーが就任しました。さらに、2011年10月にはリアム・フォックス国防大臣が友人に便宜を図っていたことが明るみに出て辞任。後任にはフィリップ・ハモンドが就任しました。これらのスキャンダルは、キャメロン内閣の運営に大きな影を落とすこととなりました。

まとめ

第1次キャメロン内閣は、戦後初の連立政権として、そして、様々な背景や経験を持つ閣僚、そして不祥事によって注目を集めた内閣でした。 保守党と自由民主党という異なるイデオロギーを持つ政党が協力して運営されたこの政権は、イギリス政治史において重要な転換点の一つとして位置づけられるでしょう。 その後の政治状況や、連立政権の運営、そして閣僚個人の経歴やスキャンダルは、今後の政治研究においても重要な分析対象となるでしょう。

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